1998 Fiscal Year Annual Research Report
ソバ属(Fagopyrum spp)植物の脱粒性に関する基礎的研究
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10760009
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大場 伸也 岐阜大学, 農学部, 助手 (80221836)
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Keywords | ソバ / Fagopyrum spp. / 脱粒性 / 小枝 / 種子 / 栽培化 / 離層組織 / 倍数性 |
Research Abstract |
作物の脱粒性は、野生種から栽培種へ作物が進化する過程で最も早く変化する農業形質の一つである。このため、脱粒性の研究は作物進化を解明する上で重要である。ソバ属(Fagopyrum spp.)には、栽培種として我が国や世界各国で広く栽培される普通ソバ(F.esculentum)と中国南部山岳地域などで栽培されるダッタンソバ(F.tattaricum)がある。ソバは、数千年以上の栽培の歴史があると考えられるが、脱粒しやすい作物の一つである。収穫条件の悪い場合は、脱粒によって40%以上もの収穫損失が生じる。そこで本研究では、ソバの脱粒性程度を小枝の抗張強度・抗曲強度を指標として、種・品種間差異を調査した。供試材料として、ソバ属野生種5種5系統、普通ソバ1種9品種・系統、ダッタンソバ1種6系統を用いた。普通ソバとダッタンソバには、その祖先野生種が各1系統ずつ含まれる。材料植物をガラス室内の風雨による衝撃を受けない条件で栽培し自然脱粒程度を調べた。その結果、栽培ソバ2種はいずれの品種・系統とも脱粒しなかったが、祖先種を含む野生種は、すべて自然脱粒した。脱離部位を調べたところ、自然脱粒する種・系統では離層組織が観察された。しかし、自然脱粒しない栽培ソバでは、離層のような特徴ある組織は見いだされなかった。また、小枝の強度を調べた結果、野生種<ダッタンソバ<2倍体普通ソバ<4倍体普通ソバ、の順に強度が強かった。自然脱粒しない栽培ソバの種・品種間差異の成因を明らかにするため、小枝の直径を測定したところ、脱粒強度と強い相関が見られた。小枝の単位面積当たり強度を推定し、普通ソバの2倍体品種と4倍体品種の間で比較したところ、有意な差は認められなかった。このことは、両品種間で見られる強度の向上が、細胞壁強度の向上といった質的な変化によるものではなく、主に小枝直径の増大によることが判った。小枝直径と他の形質との関連を見ると、種子の大きさと強い相関があった。以上の結果を考察すると、栽培化の第一段階で離層組織が消失し、質的に脱粒難の方向に変化し、さらに種子の大型化にともない小枝が太くなり、量的にも脱粒難の方向へ向かうことが推測された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shinya Oba: "Grain shattering habit of buckwheat" Advance in Buckwheat Research. 70-77 (1998)
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[Publications] Shinya Oba: "Breaking strongth of pedicels as index of grain shattering habit in Autotetraploid and diploid back wheat" Plant Production Science. ((発表予定))