1999 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンナシにおける属間交雑によるアポミクシス誘発に関する研究
Project/Area Number |
10760015
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
井上 栄一 茨城大学, 遺伝子実験施設, 助手 (90292482)
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Keywords | アポミクシス / 属間交雑 / ニホンナシ / リンゴ |
Research Abstract |
ニホンナシ'二十世紀'とリンゴとの間で属間交雑を行うと低頻度であるがアポミクシス様実生の発生が報告されている.本年度は'二十世紀'と遺伝的背景がほぼ同じと考えられる'ゴールド二十世紀'を母本として,リンゴ'ふじ'との間で属間交雑を行い,実生へのRAPDマーカーの遺伝を指標としてアポミクシス実生の発生を明らかにした. ニホンナシ'ゴールド二十世紀'を母本として,リンゴ'ふじ'の貯蔵花粉を交配し,55粒のF_1種子を得た.これらのF_1種子を播種して,温室で育成し,生存状況とRAPDマーカーの遺伝を調査した.致死性を示した実生については枯死する前の子葉から,生存個体および交雑親については本案から,いずれも改変CTAB法によってDNAを抽出した.各々の個体について全DNAを鋳型として10種類の10塩基ランダムプライマーを用いてPCRを行った. 55粒の属間交雑種子のうち53粒を播種したところ,2週間後には全ての種子が発芽した.播種してから約1ヶ月後にはこれらの約半数が致死した.さらに,播種してから約1年後の生存個体は1個体のみであった.対照としたニホンナシ'ゴールド二十世紀'放任受粉とリンゴ'つがる'放任受粉由来の実生では致死性は観察されなかった.致死した52個体の属間交雑実生のうち29個体について交雑親からのRAPDマーカーの遺伝を調査した結果,全ての致死実生において両親由来RAPDマーカーが47〜100%の確率で遺伝していた.これに対して致死せず生き残った1個体には,母本由来のRAPDマーカーだけが遺伝していた. 以上の結果から,属間交雑実生のうち,致死した個体は両親のゲノムを合わせ持つ属間雑種であることが明らかになった.一方,生き残った個体は母本組織から単為発生したアポミクシス実生であると推察された.ニホンナシにおけるアポミクシス実生の発生は新規の発見である.今後は,アポミクシス実生の効率的な誘導方法を検討する予定である.
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Research Products
(1 results)