1999 Fiscal Year Annual Research Report
土壌アントラキノンの錯体形成能-生理作用-分布特異性の因果関係
Project/Area Number |
10760037
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学部, 助教授 (50243332)
|
Keywords | 27Al NMR / アントラキノン / 錯形成能 / アルミニウム障害 / 連続変化法 / バイオアッセイ / アルミニウムストレス軽減作用 / 共生システム |
Research Abstract |
土壌の特定部位に多量集積する微生物由来のアントラキノン「クリソタルニン」の分布特異性と,同化合物とアルミニウムの錯体形成による植物のアルミニウム障害軽減作用との因果関係を解明し,土壌-植物-微生物の相互作用を土壌の有機化合物の観点から見たモデルケースとして提唱することを目的に研究を実施し,2年間の研究期間を通じて以下の成果を得た。はじめに,クリソタルニンのアルミニウム錯体形成能の評価を行った。その結果,pH2.0〜2.5の範囲で同錯体の形成されやすいことが判明し,27Al-NMR測定によって,錯体中には4配位と6配位のアルミニウムが混在することがわかった。また,連続変化法によって,錯体における両者の混在比は7対3であることが判明した。以上の結果から,クリソタルニン-アルミニウム錯体は単純な規則構造物ではなく,複雑な高分子錯体であることがわかった。次いで,バイオアッセイを通じてクリソタルニンによる植物のアルミニウム障害軽減作用を検定した結果,アルミニウム障害(幼植物の根伸長阻害)はクリソタルニンの存在によって軽減されることが明らかになった。従って,アルミニウムイオンはクリソタルニンとの高分子錯体へと変化し,根吸収されにくくなるためにアルミニウム障害が軽減されると予想された。さらに,土壌断面内でのクリソタルニンおよびそのアルミニウム錯体の垂直分布を詳細に検討した結果,吸収根が密に分布する場所ではクリソタルニン総量が多く,同時に,それらの中では結合型(錯体型)割合の高いことが推定された。以上の結果から,アルミニウム障害を受けやすい吸収根の根圏において微生物がクリソタルニンを産出し,それによってアルミニウムイオンが根吸収されにくい状態になること,すなわち,植物-微生物間で何らかの共生システムが存在することが予想された。
|