1998 Fiscal Year Annual Research Report
伐採齢分布を用いた森林所有者の伐採行動に関する計量分析
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10760097
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤掛 一郎 京都大学, 農学研究科, 助手 (90243071)
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Keywords | 伐採齢分布 / 減反率 / 林家 / 森林伐採 |
Research Abstract |
本研究では、生存時間分析を森林伐採の発生に応用し、Kaplan-Meier推定量などのノンパラメトリックな方法を用いて、伐採齢分布の形状を検討することで、森林所有者の伐採行動に接近することを試みた。 分析には、林分1筆毎に、その林分の属性と一定期間の間の伐採の発生についての資料が必要であるが、(1)三重県櫛田川流域と(2)徳島県那賀川流域の民有林について良質の資料が得られた。(1)では、大規模森林所有者1人が持つ森林(現在の所有面積は約500ha)について、過去の経営記録から、20世紀初頭から現在までの植伐の歴史をたどる資料が得られた。他方、(2)では、森林簿と県の資料をもとに、2つの谷の約4,700haの森森について、最近の10年程度の植伐の資料が得られた。また、これらの森林を所有する森林所有者の在村・不在村の別、森林所有面積についての資料を得た。 (1)の資料を、戦後の木材価格の推移や対象森林所有者からの聞き取り調査結果、その他の経営資料と合わせて分析した給果、伐採齢分布は森林所有者の伐採行動をうまく表現することができており、これを利用して、林業経営の長期にわたる変遷を明らかにすることができた。特に、森林所有者が木材価格にどのように反応して、伐採行動を変化させてきたかを詳しく見ることができた。森林所有者は径級間相対価格の変化に反応して、その時々の伐採齢を上下させることがあると考えられ、また、経営費用に対する木材の相対価格の下落に対しては、当面の伐採を相対価格の下落に対しては、当面の伐採を控え、伐採を先送りするとともに、経営規模の縮小、リストラクチャリングをはかることで対応することがあると考えられた。 (2)の分析は今後の課題であるが、この資料からは、森林所有者の属性、特に、在村と不在村の別、森林所有規模によって、どのように伐採行動が異なるのかを明らかにすることが課題となる。
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