1999 Fiscal Year Annual Research Report
森林における落葉落枝の理化学的性質が土壌表層での窒素固定生物の活動に及ぼす影響
Project/Area Number |
10760099
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
嶋 一徹 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (80274017)
|
Keywords | 生物窒素固定 / 都市近郊二次林 / 分解 / 林床有機物層 |
Research Abstract |
森林における生物的窒素固定の大半は林床に還元された有機物、すなわち落葉落枝にエネルギーを依存した従属栄養生物によって行われている。本研究では都市近郊二次林を対象に構成樹種の落葉の理化学的性質を明らかにすると同時に、それらが林地表層で分解する過程で、生物的窒素固定活性がどのように変動するのかを調査研究した。その結果、調査した8樹種のなかで常緑広葉樹のナナメノキの落葉では特異的に高い窒素固定活性が認められ、その理由には落葉直後に多く含有されている熱水抽出物のうち可容性糖類の存在が大きいことが明らかにされた。さらに、ナナメノキが優占する林分では野外における窒素固定が地表面の温度に大きく支配されていることが判明した。 これに対して、西日本を中心に都市近郊二次林に広く分布するコナラ、アベマキ落葉では、窒素固定に関与する微生物群が直接利用可能な炭素源の含有率が低く、これが落葉の分解過程における窒素固定活性を抑制する重要な因子となっていることが明らかになった。このため野外で分解過程にある各種落葉に易分解性炭素源を添加すると、これら樹種の落葉においても旺盛な窒素固定が認められることを示した。 これらの結果から、森林生態系における生物窒素固定は、構成種の落葉の性質に大きく左右されておいることを定量的に示した。さらに、年間の窒素固定量を理論的換算率をもとに概算したところ、ナナメノキが優占する林分では約1.5kg/haであるのにたいして、コナラ、アベマキなどの落葉広葉樹が優占する林分では約0.3kg/haと大きな相違があった。
|