1998 Fiscal Year Annual Research Report
林冠の疎開した海岸クロマツ林における常緑広葉樹種の更新と生理生態的特性
Project/Area Number |
10760100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
作田 耕太郎 九州大学, 農学部, 助手 (10274523)
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Keywords | 常緑広葉樹 / クロマツ林 / 更新特性 / 光合成特性 / 水分通導性 |
Research Abstract |
本研究では,暖温帯の海岸マツ林における樹木の遷移機構を明確にすることを目的として1. 九州大学農学部附属演習林早良実習場内の林冠が疎開した海岸マツ林にライン状の一時プロットを設定し,林床の稚樹個体と成木の分布位置,また,稚樹個体群の種構成について調査を行った.その結果,比較的大きなギャップが発生した場合,ハゼノキを主体とする落葉広葉樹が侵入して林冠を形成するため,落葉広葉樹と以前から残存するマツ類および海岸性の常緑広葉樹が混在した林冠が新しく形成されることが明らかとなった.林床の稚樹個体群にはマツ類の実生稚樹は存在せず,このことには林床に堆積したリターが影響しているものと考えられた.広葉樹稚樹の分布には樹種間差が生じており,分布の偏りが小さい種と大きい種に大別された.偏りの小さい種はすべて常緑広葉樹であり,また,クロキなどの中低木性の樹種の方がタブノキなどの高木性の樹種よりも偏りが小さかった.偏りの大きかった樹種は,ハゼノキなどの落葉広葉樹とマサキなどの匍匐性を有する常緑広葉樹であった.これらの樹種はマツ類と落葉広葉樹が林冠を構成している林床に偏在し,天空写真による相対光強度の測定から,光環境の年変化が林床の稚樹の分布に影響していると考えられた. 2. 海岸性の常緑広葉樹より同科同属のクスノキとヤブニッケイを選定し,人工庇陰による実生苗の比較栽培を行い,物質の生産と分配様式および葉のガス交換特性と根系の水分通導性を調査した.その結果,物質の生産と分配様式よりクスノキは庇陰回避型,逆にヤブニッケイは庇陰耐性型の種と判定された.このような樹種の特性は,葉と根の生理的機能とも密接に対応しており,回避型のクスノキでは庇陰下においても生理的機能は高い値を維持し,耐性型のヤブニッケイでは光環境と対応した値に変化していた.
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