1999 Fiscal Year Annual Research Report
森林の蒸散過程に果たす樹体内水貯留の役割-土壌水分・樹体水貯留・蒸散量・通水抵抗の相互関係-
Project/Area Number |
10760101
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
瀧澤 英紀 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (60287604)
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Keywords | 森林 / 蒸散 / タイ / 蒸発抑制 / 土壌水分 / 潜熱フラックス / 気象観測 / 水貯留 |
Research Abstract |
本研究の目的は森林の蒸散過程における蒸発抑制と土壌水分、樹体内水貯留の役割を解明することにある。試験地はタイ、チェンマイにあるKog-Ma試験地の丘陵性熱帯季節林(樹高30m)である。本試験地は、4〜10月が雨季で11〜3月が乾季で5ヶ月程度の長い無降雨期間という特別な条件であり、土壌水分などの環境因子と蒸発抑制関係の実証的研究に適すると考える。 測定項目は、50m観測塔による微気象要素、放射収支、また表層50cmまでの土壌水分および樹液流量である。土壌水分はTDR法により、樹液流量はヒートパルス法を用いた。蒸散量は単層タイプの熱収支モデルより推定した。モデルの検証には、年4回の顕熱・潜熱フラックスなどを直接測定する集中観測データを用いた。 3,5,8,11月の計4回全ての観測結果を用いて群落コンダクタンスの光合成有効放射量および葉面と大気間の水蒸気圧差の関係パラメータを非線形回帰分析により求めた。雨季乾季を問わず求めたパラメータにより熱収支を求めると、乾季の3月を除く全ての期間では良好に熱収支を再現するのに対し、3月は過大な計算となった。すなわち、乾季のみ何らかの抑制がある。 さらに、土壌水分がpF3より低下する乾季では日中に減少する樹液流量を再現できないことより、群落コンダクタンスモデルに葉の水ポテンシャル低下により気孔開閉が生じるモデルを組み込むと、日中減少する樹液流量を再現することができた。この抑制は1〜4月頃まで機能していた。 表層の土壌水分変動から求められた吸水フラックスは、雨季では樹冠上の潜熱フラックスとほぼ同程度となるが、乾季では1mm/day以下となり、潜熱フラックスを大きく下回る。よって、蒸散は雨季では比較的均一に表層土壌水分が利用されるが、乾季では深層部の水などを利用する事が分かった。
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Research Products
(1 results)