1998 Fiscal Year Annual Research Report
X線回折法によるセルロースI_a→I_b転移過程のinsitu観察とその機構解明
Project/Area Number |
10760105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 昌久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40270897)
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Keywords | セルロース / X線回折 / 相転移 / 熱膨張 / セルロースI_a / セルロースI_b |
Research Abstract |
室温から280℃まで段階的に昇温ならびに降温させながら、それぞれの温度での高結晶性シオグサセルロースのX線回折プロファイルを測定した。昇温にともない赤道の面間隔は増大し、降温により再びもとの値へ戻った。しかし、子午線の面間隔は昇温、降温でも変動しなかった。これより、セルロース結晶の熱膨張は、直鎖状の合成高分子の場合と同様、繊維垂直方向に顕著である一方、繊維方向に変化しないことが明らかになった。 温度に対する赤道の面間隔の値の変動をプロットした結果、220℃から230℃付近に変局点が存在していた。室温から220-230℃までの面間隔の増大割合はそれほど大きくないが、220-230℃から280℃では著しく大きい。すなわち、220-230℃付近にセルロースの2次の相転移点の存在が明らかになった。さらに、熱膨張係数(Thermal Expansion Coefficient)を計算した結果、相転移前後ではおよそ一桁値が違うことが分かった。 セルロースIαからIβへは直接転移するのではなく、2次の相転移点以上の高温相を経て起こると予想される。そこで、280℃における分子鎖垂直方向の熱膨張を解析した結果、グルコース環垂直方向には室温時のおよそ4%膨潤したものの、グルコース環と平行方向にはほとんど膨潤しないことが分かった。セルロースIαからIβへの転移の機構としては、分子鎖のrotationとtranslationの二つが考えられるが、高温相の精密な構造解析によって転移機構が解明されると予想される。
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