1998 Fiscal Year Annual Research Report
免疫法による木材細胞壁リグニン中の縮合型及び非縮合型結合の選択的標識
Project/Area Number |
10760107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 助手 (60273489)
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Keywords | リグニン / 縮合型結合 / 非縮合型結合 / 免疫法 / 電子顕微鏡法 / 抗体 / 木化 / 樹木細胞壁 |
Research Abstract |
リグニン中の芳香核上で炭素-炭素結合によって結合した縮台型結合は、様々な分解反応に対して抵抗性を示すため、従来の化学分析法ではその存在が過小評価されていると考えられる。そこで、縮合型結合を持つモデル化合物としてデヒドロジバニリンを選択し、バニリンからベルオキシダーゼ、過酸化水素水を用いて合成し、酢酸で精製した。現在その構造解析と、タンパク質との結合反応の条件について検討中である。今後、デヒドロジバニリン-タンパク質複合体をマウスに感作し、抗体を調製する予定である。 一方、免疫電顕法では、標識の分布からリグニン中の結合様式の局在を観察できるが、同じ試料で全リグニンの分布も合わせて考察する必要がある。そこで、免疫電顕法に用いる同じ試料から超薄切片を作製し、フッ化水素酸で処理して多糖類を除去し、細胞壁中の全リグニンの分布を可視化する方法を検討し、その最適な反応条件を調べた。この方法により、これまであまり調べられてこなかった広葉樹木繊維細胞壁におけるリグニン堆積過程を観察し、針葉樹仮道管壁と異なる新たな知見を得た。すなわち、針葉樹仮道管では木化は壁肥厚完了後に細胞間層側から内こう側へ順に堆積していくのに対し、広葉樹木繊維では、木化は壁肥厚中に壁内にほぼ均一に堆積する段階と、壁肥厚完了後に壁内に堆積していく段階の2段階で進行することが明らかになった。同じ試料から連続的に作製した超薄切片について、上記の抗体を用いて免疫電顕観察を行うことにより、細胞壁の木化に関して新たな知見が得られることが期待される。
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