1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10760114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猿渡 敏郎 東京大学, 海洋研究所, 助手 (00215899)
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Keywords | 汽水域 / 魚類生態学 / 生活史 / 仔稚魚 / 生物種多様性 / 涸沼 / 汽水湖 / 進化 |
Research Abstract |
汽水域は海洋と陸水域との接点であり、両水域間の物質循環や生物種多様性を維持する上で重要な水域である。しかし、わが国における汽水域に関する研究は諸外国と比較した場合後れの目立つ分野である。本研究では沿岸水域との水の交換が維持されている茨城県の涸沼を汽水域の,岩手県の閉伊川を河川河口域のモデル水域として研究を行った。 野外採集調査は、張り網、MTDネットによる卵仔稚魚採集、小型引き網を用いて行った。潮汐作用による涸沼と沿岸水域との魚卵仔稚魚の移動・滞留機構を解明するために,涸沼の流出河川、下涸沼川に掛かる大貫橋において,月二回の大潮の際に24時間採集調査を実施した。3時間ごとに表層と底層にMTDネットを投入し、潮汐流によって運ばれてくる魚卵・仔稚魚の採集を行った。その結果,涸沼からは62種の硬骨魚類が確認された。その多くが春から夏にかけて出現する遇来種であった。 大貫橋で実施した調査の結果,7、8月にはサッパの卵が大量に採集され,涸沼水系が本種の産卵場として機能していることが示唆された。10-11月にはアユ仔魚の流下が確認された。現在アユ仔魚の滞留機構を解明すべく,データを解析中である。 涸沼に周年出現したシラウオは,魚類中幼型進化的異時性を示すことで知られている。現在シラウオに見られる特異な幼型進化の持つ汽水域への適応機構を新規研究課題として実施している。 閉伊川では遡河回遊型ワカサギの産卵遡上生態調査を行い,現在標本とデータを解析中である。ワカサギ仔魚流下調査も行い,多数のワカサギ仔魚を採集した。現在閉伊川河口域におけるワカサギ仔稚魚の滞留機構を研究中である。 以上、二年間にわたり,涸沼と閉伊川をモデル水域として,汽水域における魚類の生活史に関する生態学的研究を実施した。
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Research Products
(1 results)