1998 Fiscal Year Annual Research Report
魚肉ゲル形成の発現におけるミオシン軽鎖サブユニットの役割に関する研究
Project/Area Number |
10760125
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
石崎 松一郎 東京水産大学, 水産学部, 助手 (40251681)
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Keywords | 魚類 / ミオシン / ミオシン軽鎖 / ゲル形成 / 動的粘弾性 |
Research Abstract |
魚肉タンパク質の加熱ゲル形成性の発現には,筋原線維タンパク質の主要成分であるミオシンが主体的な役割を担っている。ミオシン分子は2本の重鎖と4本の軽鎖から成るサブユニット構造をとるが,加熱ゲル形成過程で重鎖が相互作用して多量体を形成していく現象が確認されており,重鎖の挙動に研究の興味が注がれてきた。一方,軽鎖はミオシン頭部と尾部の接続部近くに水素結合によって結合し,ミオシン頭部の構造安定化に大きく寄与しているにも係わらず,ゲル形成における役割は明らかではない。そこで本研究では,加熱過程における軽鎖の挙動を調べ,ミオシンのゲル形成における軽鎖の役割を明らかにすることを試みた。 1.スケトウダラ,シログチ,トビウオ,クロカジキおよびコイ・ミオシンにつき,30〜80℃で加熱処理して各種軽鎖の解離度を魚種間で比較したところ,SDS-PAGEの結果から,加熱温度の上昇に伴って解離する軽鎖の種類に魚種特異性が認められ,クロカジキやコイなど加熱によってアルカリ軽鎖の解離が顕著な魚種,シログチやトビウオなどDTNB連鎖の解離が顕著な魚種,スケトウダラなど加熱に係わらず未加熱の状態で既に軽鎖の解離が著しい魚種に分類された。2.加熱過程で特異的な軽鎖の解離が認められたコイおよびトビウオ・ミオシンにつき,動的粘弾性測定を行ったところ,軽鎖を予め欠損させるとミオシンの弾性発現がより低温で起こることを明らかにした。さらに,軽鎖の欠損を段階的に抑制することによって,弾性発現温度の低温側へのシフトが消失することも認めた。以上の結果より,軽鎖がミオシンから解離すると,ゲル形成の初期段階に変化が生じ,ミオシンの弾性発現が速まることがわかった。本研究で得られた知見は,ミオシンのゲル形成において,軽鎖がその引き金としての役割を担っている可能性を示唆している。
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