1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10760135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
首藤 久人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40292792)
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Keywords | インド経済自由化 / 買い上げ制度 / 肥料補助金 |
Research Abstract |
本年度においては,インド農業の自由化が階層間の厚生に及ぼす問題を定性的に分析した。当初の計画通り,これは以前から取り組んでいた内容を洗練させたものになっている。 より具体的に本年度の研究内容を述べる。インド穀物市場においては,低所得者層の食糧へのアクセスを容易にするために,買い上げおよび公的分配システムが実施されている。これは経済自由化のなかでもその性格上維持されているが,その他の政府介入のいくつかは,その廃止ないし規制の緩和が試みられている。本研究は,それら介入の部分的自由化の影響を考察したものである。一つは,穀物の民間流通の規制に関するもので,これは『農業経済研究』近刊への掲載が決定している。もう一つの部分的自由化の内容は肥料などの経常財補助金削減の影響である。 以上の分析については,1999年1月に現地へ出かけ,農業省などのエコノミストらからレビューを受けると同時に,制度の詳細についての説明を享受している。結果,より現実に近い形で考察を行うヒントを得,現在分析に取り組んでいる。現在得ている帰結を述べておく。経常財等の補助金削減は,買い上げを受ける富農層にとって負の影響が及ぶことは少なく,むしろ買い上げを受けない農業後進地域の生産者に負の影響を及ぼすものである。これは買い上げ制度の仕組みによるものである。そもそも肥料など経常財補助金については,階層間に与える影響が異なるとされ,非中立的な政府介入とされている。しかしインドでは,補助金を削減する場合でも買い上げ政策と結びつくことにより,主体間で非中立的な影響がでることは注目に値する。さらにこの分析を進め,近年インド穀物市場において露呈しているいくつかの問題についての解釈を与えることが期待できる。
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