地域流通システムとしての「朝市」の機能・役割に関する実証的研究

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10760137
• Research Institution: Osaka Prefecture University
• Principal Investigator: 藤田 武弘 大阪府立大学, 農学部, 講師 (70244663)
• Keywords: 朝市 / 直売 / 地場流通 / 市場外流通 / 産消交流

Research Abstract

大阪府下では、消費地との近接性を生かした市場外流通も早くから多様な展開をみせ、生産者と消費者とが直接対峙する原基的な形態である「朝市」は、57ヶ所(1996年3月、大阪府調べ)存在する。本年度は、(1)地場産品の販売・購入を通じてお互いの「顔」のみえる関係が構築され、都市住民である消費者に地域農業に対する理解を深める機会を提供すること、(2)販売活動への参加を通じて地域の農家女性や高齢者の役割が再評価されること、等の点で今後の展開が注目されつつある都市近郊の「朝市」の存在形態に着目し、予備的に実施したアンケート調査(1996年8月実施、回収率=91.2%)の結果分析を踏まえ、開設主体別類型から抽出した事例「朝市」に対する実態調査を行った。考察結果は以下の通り。参加農家は「朝市」への販売が全てという生産者ばかりではなく、とりわけ専業農家においては卸売市場流通を与件とした出荷調整機能を期待するなど、経営における「朝市」のウエイトは副次的である場合も多い。しかし、消費者サイドからの関心の高い有機農産物等の「こだわり商品(差別化商品)」も卸売市場流通を利用するなど流通チャネルの拡大・多様化の進展が著しい昨今においては、裾もの(格外品)出荷、不定期出荷に象徴される消極的な意識付けを払拭しなければ「朝市」継続性を確保することは容易ではない。また、生産者中心型「朝市」にみる参加農家数の減少傾向を鑑みれば、消費者から期待される多品目の豊富な品揃え・常設化等の要求に対応しうる条件整備として、商品の数量・品目調整や生産者の確保、また組織運営等の面での負担の軽減を図るべく、地元農協や消費者も含めた行政の協議会組織などからの支援措置も必要である。

Research Products

• [Publications] 藤田武弘: "市場体系論の系譜と地場流通研究" 農政経済研究(大阪府立大学). 第21集. 57-66 (1998)
• [Publications] 藤田武弘: "大都市近郊産地の出荷・販売対応と卸売市場 細川允史編『現代卸売市場論(日本農業市場学会研究叢書第8号)』" 筑波書房, 未定(印刷中) (1999)