1998 Fiscal Year Annual Research Report
水生生物指標による親水性水路・湧水域の生態学的評価
Project/Area Number |
10760145
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Research Institution | Akita Prefectural College of Agriculture |
Principal Investigator |
神宮字 寛 秋田県立農業短期大学, 講師 (10299779)
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Keywords | イバラトミヨ / 湧泉 / 圃場整備事業 |
Research Abstract |
秋田県仙北郡の扇状地地帯に点在する湧泉には、環境庁のレッドリストにより絶滅危惧種(IA)に指定されたイバラトミヨ(雄物型)が生息している。雄物川流域に生息するイバラトミヨの減少については各方面から指摘され、保護の必要性が唱えられているが、仙北郡の湧泉および水路に生息するイバラトミヨの実態については明らかになっておらず、一部を除き保護対策がとられていない。秋田県の扇状地地帯では、土地改良事業が急速に進展しており、生息地のさらなる減少が予想される。そこで、イバラトミヨの生息分布域や湧泉水路の環境条件とイバラトミヨの関係について基礎的な研究を行ってきた。 これまでの研究の進捗状況について説明する。秋田県仙北郡千畑町役場、仙北平野土地改良事務所の協力を得て、千畑町の畑屋地区および土崎地区の湧泉分布調査と維持管理組織の代表者に対してヒアリング調査を行ってきた。その結果、畑屋地区では平成9〜10年度の圃場整備事業の影響により、7箇所存在していた湧泉が2カ所を残すだけとなった。残された湧泉の生息環境も、水位の低下により悪化している。 土崎地区では22カ所の湧泉が確認できた。そのうち、かつて生息していたが現在は生息が確認できない湧泉が7カ所、現在も生息している湧泉が8カ所あることが明らかになっている。 現在継続中の研究内容は以下の3調査となっている。 (1) イバラトミヨが生息する湧泉の営巣活動調査 イバラトミヨは球状の巣を作ることが知られている。イバラトミヨの生息が確認された湧泉から3カ所の湧泉を選び、営巣時期に作られる巣数の比較調査を行う。同時に、巣作り、産卵、ふ化、巣立ちまでの観察を行う。また、営巣にかかわる水温、水深、水草の生育状況、餌条件、流量等の測定を行い営巣環境を決定する上で重要な環境要因について調べる。 (2) イバラトミヨが生息する水路と環境要因の関係性 水路に生息しているイバラトミヨと水路の環境条件(流速、水深、水路幅、水温、水草の被度、餌条件、等)との関係について明らかにする。 (3) 湧泉と水路のネットワーク性 人工構造物が設置されていない湧泉とそれにつながる水路間では、イバラトミヨの移動が行われていることが推察される。その移動は、日常的な狭い範囲の移動と繁殖期や冬季等に活動の主たる場を求める大きな移動が考えられる。12ヶ月間にわたり湧泉と水路間の移動性の確認を行う。
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