Research Abstract |
本研究は,人間協調型の生物生産ロボットシステムの確立を最終目標に,センシングシステム,危険度関数の算出アルゴリズム,およびロボット制御の開発を目的としている。 平成10年度の実験では,超音波センサと赤外線センサから成るセンシングシステムを開発し,基礎実験を行った。その結果,人間と背景との識別が行われ,人間の移動(位置,速度,移動方向)を良好に検出できることが分かった。また,人間とロボットとの相対速度や距離などをパラメータに含む危険度関数を用いて危険性の程度を数値化する方法を検討し,コンピュータ・シミュレーションでその有効性を確認した。 今年度の研究では,ロボットにセンシングシステムを搭載し,危険度関数を含むアルゴリズムを用いてロボット制御の実験を行った。ロボットの制御方法としては,危険度関数で算出した値に対して数段階のしきい値を設定し,それに対応してマニピュレータの移動速度を切り替える方法を用いた。実験は実際の作業を想定し,ブドウ園において実施し,人間を様々な方向から接近させて行った。実験の結果,マニピュレータは危険度が高くならないように速度を変化させ,不必要な停止を避けながら作業を継続した。また,危険度が高くなると,マニピュレータは停止し,人間との接触を回避した。 また,ロボットシステムの作業効率をコンピュータ・シミュレーションで評価した。評価方法としては,安全システムを搭載しない作業効率重視のロボット,危険度関数のパラメータを変化させたロボット,および作動領域内に人間が進入した場合に停止するロボットの3種類を想定し,本ロボットシステムとの比較をエンドエフェクタの移動量で数値化した。その結果,本ロボットシステムは,作業重視型のロボットシステムに対しても95%程度の効率で作業が行えることが示された。
|