1998 Fiscal Year Annual Research Report
溶存O_2欠乏条件下での根におけるリグニン生成と吸水抑制との関係解析
Project/Area Number |
10760153
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 敏 九州大学, 生物環境調節研究センター, 助手 (90191585)
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Keywords | リグニン / 根の吸水特性 / 水耕 / 溶存O_2濃度制御 / O_2欠乏条件 / 組織化学 / 光学顕微鏡 / キュウリ植物 |
Research Abstract |
まず,キュウリ植物の水耕において培養液の溶存O_2濃度を,O_2欠乏条件から高溶存O_2濃度までの広い範囲について長期間にわたって制御することが可能な装置を開発した.次に,この装置を用いて溶存O_2濃度条件をO_2欠乏(溶存O_2濃度0.01mM未満)および高溶存O_2濃度に制御し,それぞれの条件に2葉期のキュウリ植物を移植して20日間生育させた.その後,両者の生育について比較するとともに,両者の根系について主根から分岐した二次根で最も長い根を採取し,三次根の分岐が僅かにみられる部位を試料として厚さ80〜120μmの横断切片を作成した.得られた切片をただちにフロログルシノール・塩酸反応に基づいたリグニン検出試薬により染色し,光学顕微鏡を用いて組織化学的に観察した.その結果として, 1. 高溶存O_2濃度と比べ,O_2欠乏条件下では葉の伸長が著しく抑えられ,根でも顕著な生育抑制がみられた. 2. 高溶存O_2濃度においてはリグニンの存在を示す赤色の呈色反応が木部の肥厚した細胞壁のみにみられ,木部以外の組織すなわち表皮,皮層,内皮および師部ではリグニンの存在は認められなかった. 3. O_2欠乏条件下では木部の呈色反応に加え,皮層にも呈色反応が認められ,とくに中心柱(維管束)を取り囲む部位において柔細胞の細胞壁に明瞭な呈色反応がみられた. 以上の結果から,O_2欠乏条件下で生育させたキュウリ植物の根の皮層組織においてリグニンが生成され,その細胞壁に蓄積されることを実証するとともに,このリグニン生成がO_2欠乏状態における根の吸水抑制の一因となることを示唆した.
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