1998 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞のアポトーシスを抑制する乳由来の因子の検索
Project/Area Number |
10760156
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
飴谷 美智子 宇都宮大学, 農学部, 助手 (07760128)
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Keywords | アポトーシス / 神経細胞 / 人乳 |
Research Abstract |
アポトーシスは、ホルモンやサイトカインによる情報や成長因子の除去などの生物学的要因、放射線や熱といった物理的要因、薬物などの科学的要因によってひき起こされる。本研究では、ヒトの神経細胞株であるSH-SY5Y細胞を用いて、ヒト初乳中に含まれる成分で神経細胞のアポトーシスを抑制または促進する成分を検索することを目的として実験を行った。ヒト初乳を分画し、ホエー画分を得た。そのホエーをさらにDEAE-Sephacelカラムで分画し、分画された各フラクションのSH-SY5Y細胞の増殖への影響をMTTアッセイ法で調べた。その結果、細胞の増殖を促進している画分A、Bと抑制している画分Cを得た。これらの細胞増殖促進、抑制活性の度合はタンパク質濃度に依存しており、100μg/mlになるようにそれぞれの画分を培地に添加した場合、細胞の増殖率は無添加時に比べ、画分Aで約25%、画分Bで約20%増加し、画分Cでは約10%減少した。そこで画分A、Bにアポトーシス抑制活性があるかどうかを調べるため、SH-SY5Y細胞にアミロイドペプチドβA4_<25-35>を添加し、アポトーシスを誘発させた条件下で画分A、B、Cを添加し、SH-SY5Y細胞の増殖率を調べた。その結果、画分A(100μg/ml)を添加した場合、アミロイドペプチドのみを添加した場合に比べて細胞の増殖率は約40%も増加し、アポトーシスの抑制効果が認められた。画分B、Cを添加した場合には細胞の増殖率は逆に減少しており、抑制効果は認められなかった。以上の結果より、画分Aにアポトーシスの抑制因子が含まれていることが明らかになった。現在画分Aに含まれる抑制因子がDNAの断片化を阻害するかどうかについても検討を行っている。また、細胞増殖促進活性やDNAの断片化阻害活性を指標として、抑制因子の単離精製を進める予定である。
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