1998 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠哺乳動物の低温耐性因子の探索および器官低温保存への利用
Project/Area Number |
10760163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 実紀 京都大学, 農学研究科, 助手 (20243074)
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Keywords | 冬眠 / 低温適応 / 低温保存 |
Research Abstract |
冬眠(寒冷適応)を生じる性質を持つシリアン(ゴールデン)ハムスター、ならびに対照として冬眠を行わない小型哺乳動物の例としてラットより採取した各種組織を低温に暴露した際の差異を検討した。シリアンハムスターおよびラットの成熟雄を軽度麻酔下に屠殺し、肝、腎、精巣、背部皮膚、ならびに背最長筋を採取し、各組織より厚さ5mm程度の組織片を作製した。これらの組織を湿潤箱中の培養デッシュに入れ、低温庫(庫内温度約3℃)内に静置した。採取直後の組織片ならびに3および24時間低温暴露後の組織片について形態学的検討を行った。採取直後の組織と比較して、両動物種とも低温暴露3時間後の組織では組織全体に軽度の核濃縮が生じ、24時間低温暴露後ではより顕著であった。低温暴露3および24時間後のラット腎の尿細管においては細胞の膨化が認められた。これに対してハムスター腎の尿細管においては顕著な細胞膨化は観察されなかった。また、低温に暴露したラット肝組織においては非実質細胞の顕著な核濃縮ならびに血管内皮細胞の剥離が散見された。精巣においては精巣内精子および精子細胞では顕著な変化がないのに対し、精母細胞では部分的に膨化等の変成が観察された。皮膚および筋においては両動物種とも低温暴露に伴う顕著な変成は認められなかった。今回の実験においてはラット、ハムスターともに体表付近の組織では低温暴露のみによっては変成が顕著ではなかったが、ラット腎および肝組織において観察された変成より、組織低温傷害は低温暴露後に通常の体温まで昇温させた場合により顕著に現われる可能性があるので検討中である。また、ハムスター冬眠モデルの作製についても検討中である。
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