1999 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠哺乳動物の低温耐性因子の探索および器官低温保存への利用
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10760163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 実紀 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (20243074)
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Keywords | 冬眠 / 低温適応 / 低温保存 |
Research Abstract |
冬眠(寒冷適応)を生じる性質を持つシリアン(ゴールデン)ハムスターより採取した各種組織を低温に暴露した際、および、低温暴露後に体温付近の温度に復帰させた場合の変化を検討した。また、環境制御による冬眠モデルの作製ができなかったので、冬眠の誘起との関連が推測されている精巣切除の影響を検討した。無処理および精巣切除処理を施したシリアンハムスターの成熟雄を軽度麻酔下に屠殺し、肝、腎、背部皮膚、ならびに背最長筋を採取し、それぞれ一辺5mm程度の組織片を作製した。採取直後ならびに24時間低温(約3℃)暴露後、および採取直後または24時間低温暴露後に38℃に1時間保持した組織について形態学的検討を行った。低温暴露後の組織では軽度〜中程度の核濃縮が生じた。低温暴露後に38℃で1時間保持することにより、肝(実質細胞および肝小葉内非実質細胞)および腎組織(尿細管上皮細胞)において核濃縮に加え細胞質空胞形成等の傷害が増大した。低温暴露後に温度上昇させた組織の傷害は、採取直後の組織を38℃に1時間保持した場合に比べて顕著であり活性酸素の発生によるものと推測された。皮膚の表皮細胞は低温暴露後、温度上昇を行っても良好な形態を保っており、これらのストレスに耐性が高いと考えられる。精巣切除は、ほとんどの場合、組織障害の発生に明瞭な影響を与えなかったが、24時間低温暴露後に38℃に1時間保持した肝組織において、精巣切除個体において無処理の個体より肝実質細胞での傷害が軽度である傾向が認められた。これは冬眠とは直接的に関連しないかもしれないが、これらの個体の肝には組織障害を軽減する因子が存在する可能性があるので現在検討を行っている。
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