1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10760170
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 崇 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (40291413)
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Keywords | 概日リズム / 時計遺伝子 / cDNAクローニング / マッピング / 遺伝子発現 / 光周反応 |
Research Abstract |
生物は環境の24時間の周期に適応するために概日リズムを刻む計時機構を獲得した。鳥類は眼の他に松果体と脳深部に光受容器を持ち、振動体も視交叉上核の他に眼と松果体に存在し、哺乳類とは概日リズムの制御機構が異なっている。そこで本研究では鳥類の概日リズムの制御機構を明らかにすることを目的としてウズラの時計遺伝子を単離、マッピングし、さらにその発現について検討した。 ウズラでは眼、松果体、視交叉上核の三つのオシレーターのうち、眼が最も重要である。そこで眼からcDNAを合成し、degenerate PCR法及びRACE法により、Clock及び二つのPer cDNAをクローニングした。ホモロジー解析の結果から二つのPerはそれぞれマウスのPer2,Per3に相同性が高いことが明らかになった。またこれらの遺伝子をウズラとニワトリの染色体上にマッピングした結果、Clockは4番染色体上に、また二つのPerはそれぞれミクロ染色体上に存在した。Clock遺伝子はマウスでは第5番染色体にマッピングされており、マウスとニワトリの染色体においてシンテニーが確認された。 さらに単離した遺伝子の発現を眼と松果体において検討したところ、Clockは1日中発現しており、Per2,Per3の発現は明期に高く、暗期に低いという明白なリズム性を示した。また光照射によりPer2 mRNAの発現が誘導された。ウズラは恒暗条件下で飼育し、主観的明期に光をあびると時計の位相が後退し、主観的暗期に光をあびると位相が前進することが明らかにされている。これまで同じ光刺激が、ある時は時計の位相を後ろに、ある時は前に動かすメカニズムは不明であったが、本研究の結果からその分子メカニズムが明らかになった。 本研究により概日時計の分子機構が明らかになったが、今後光周性をはじめとする、概日リズムに支配される様々な現象の分子機構の解明につながることが期待される。
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[Publications] T.Yoshimura & S.Ebihara: "Decline of circadian photosensitivity associated with retinal degeneration in CBA/J-rd/rd mice"Brain Research. 779. 188-193 (1998)
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[Publications] 海老原史樹文、吉村崇: "時計遺伝子"ファルマシア. 34. 563-567 (1998)
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[Publications] 吉村崇、海老原史樹文: "光とサーカディアンリズム"医学のあゆみ. 190. 269-272 (1999)
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[Publications] 吉村崇、海老原史樹文: "鳥類の概日リズムの分子機構"日本比較内分泌学会ニュース. 95. 34-37 (1999)
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[Publications] S.Ebihara et al.: "A vian circadian clock : Toward the understanding of molecular mechanisms."Proceedings of the 8th Sapporo Symposium on Biological Rhythm. (in press). (2000)
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[Publications] 吉村崇 ら: "鳥類の概日時計の分子機構"東海畜産学会誌. (in press). (2000)
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[Publications] 吉村崇、鈴木亨、海老原史樹文: "生物時計の分子機構"シュプリンガー・フェアラーク東京. 8 (1999)