1998 Fiscal Year Annual Research Report
ボルナ病ウイルス感染動物における発病機序解明の基礎的研究
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10760181
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学部, 講師 (50295896)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / ウマ / 垂直感染 |
Research Abstract |
本年度の研究は、主に家畜におけるボルナ病ウイルス(BDV)の疫学調査とその遺伝子レベルの比較解析を試みることを目的として、ウマにおける疫学的調査を行った。その調査過程で、突然の発熱後、神経症状と起立困難を呈したBDV抗体陽性妊娠馬1例を発見し、BDVの検索を行ったところ母馬及びその胎子の中枢神経からBDV-RNAが検出されBDVの垂直感染の可能性を示唆する結果を得た。本症例馬は、年齢11歳、妊娠8カ月齢のサラブレッドで、急性経過で神経症状を呈し起立困難で予後不良と診断され、病理解剖に付された。本症例馬と胎子由来の血清、脳脊髄液中のBVD抗体検査の結果、母馬の血清及び脳脊髄液中にBDV-p40とp24に対する抗体を検出したが、胎子は陰性であった。母馬と胎子の脳、PBMC及び臍帯血についてRT nested-PCR法でBDV-RNAp24領域の検出を行った結果、母馬の脳及び胎子の脳、PBMC及び臍帯血からBDV-p24が増幅され、それらの増幅されたBDV-p24領域の塩基配列を決定した結果、両個体に存在したBDV-p24の塩基配列は一致し、これまで報告されたヨーロッパ由来のStrain V.He/80,WT-1の塩基配列と高い相同性を示した(96.3-99.7%)。塩基配列に基ずくアミノ酸配列の相同性は100%であった。一方、ISHによる組織内のBDV-RNA検索の結果、母馬と胎子の脳組織においてBDV陽性シグナルが認められ、母馬では中枢神経系の複数箇所で陽性シグナルが認められたが、胎子は大脳、海馬及び間脳と限局していた。本症例は、ボルナ病ウイルスの垂直感染例の報告としては初めてであり、これまで不明であった伝播経路について新たな知見を得た。これまでに、妊娠馬及び胎子を対象としたBDVの疫学調査が行なわれていない事から今後も調査を継続し、垂直伝播の頻度と機序について調査する必要がある。この知見は学術雑誌に現在投稿中である。
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