1998 Fiscal Year Annual Research Report
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10770023
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
片岡 洋祐 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第3研究部, 研究員 (40291033)
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Keywords | 光酸化 / 光増感色素 / 中枢神経 / 興奮性神経伝達 / シナプス伝達 / 海馬 / 線条体 |
Research Abstract |
脳内中枢神経伝達を体外から自由に制御するため、対象領域への光増感色素の投与と光照射を組み合わせて組織を急激に酸化し(光酸化)、一定期間シナプス伝達を遮断することを試みた。ラット海馬スライス標本を用いた実験で、細胞外液中への増感色素投与後、ハロゲン光(32.5mW/cm^2)を数十秒照射すると照射領域内の興奮性シナプス伝達を可逆的に遮断できることを以前から示してきた。今回、この光酸化法を麻酔下もしくは無麻酔下の動物の脳に応用し、体外から脳内中枢神経伝達を可逆的に抑制できるか検討した。 麻酔下のスナネズミ背側海馬,(Stratum Radiatum)に刺激電極、記録電極、光増感色素投与用ガラス管を挿入し、興奮性シナプス後電位(EPSP)を記録しながら増感色素を注入した。その後、直径1mmのグラスファイバーを用いてハロゲン光(3.26W/cm^2)を体外から十数分照射すると神経伝達が完全に抑制されることが確認できた。抑制された神経伝達は数時間後には完全に回復し、光の照射強度、照射時間と神経伝達抑制効果との関係はスライス実験のそれとよく一致した。次に本法を自由行動下のスナネズミ片側線条体に応用したところ、海馬でのシナプス伝達抑制効果と時間的に一致する行動変化を観察することに成功した。すなわち、体外からの約十分間の光照射で光酸化側への旋回運動が観察され、さらに数分の照射を加えると自発運動が消失した。しかし、数時間後には行動は完全に正常化し、このことは海馬からのEPSP記録実験と時間的にもよく相関していた。その後、本実験で使用している光増感色素の吸収波長にピークを持つメタルハライド光源を用いて同様の実験を行ったところ、光酸化効果を数倍に増幅することができた。以上より、光酸化法がスライス標本だけでなく、麻酔・無麻酔下の動物にも応用可能なこと、抑制効果の発現に要する時間は色素の吸収波長域の光エネルギー量に相関すること等が明らかとなった。今後、多光源化するなどして、本法による神経伝達抑制効率を増輻すると同時に、色素の投与法を工夫して特定神経投射間の選択的な神経伝達抑制を実現したい。
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