1999 Fiscal Year Annual Research Report
褐色脂肪組織の脱共役タンパク質サブタイプの発現と熱産生能の調節機構
Project/Area Number |
10770024
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大日向 浩 旭川医科大学, 医学部, 助手 (20233257)
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Keywords | 褐色脂肪組織 / 脱共役タンパク質 / ドコサヘキサエン酸 / アラキドン酸 / 非ふるえ熱産生 / 脂肪酸組成 |
Research Abstract |
非ふるえ熱産生組織である褐色脂肪組織-BATは寒冷馴化、拘束ストレス負荷及び新生期において機能亢進、絶食で機能低下を起こす。この際、BAT膜リン脂質脂肪酸組成の変化と共に、種々の生理活性をもつn-3多不飽和脂肪酸-ドコサヘキサエン酸-DHAレベルが唯一BAT in vitro熱産生能に呼応して増減していた。そこで、DHAがBAT熱産生能の促進的調節に関わる可能性を検討するため、ラットへのDHA長期投与を試みたが、上記実験下で見られなかったBATリン脂質脂肪酸組成のアラキドン酸-AA低下をもたらすと共に熱産生能は亢進しなかった。 この点を踏まえ、今年度はラットに4週間DHAとAAを単独及び同時投与した3群と対照群を用い、BAT熱産生能と脱共役タンパク質-UCPサブタイプの発現を調べた。 その結果、体重と摂食量、BATと他の組織重量(白色脂肪組織、肝臓、副腎など)、基礎時と熱産生刺激時のin vitroBAT酸素消費量のいずれの値も、対照群との有意差を示さなかった。BATリン脂質脂肪酸組成を見ると、DHAとAAの単独及び同時投与によるオレイン酸減少と単不飽和脂肪酸減少、不飽和指数増加が示された。AAとAA+DHA投与群では主にAA増加とリノール酸減少が認められた。BATのUCPサブタイプのmRNA解析により、AA・DHA投与の各3群ともにUCP1-mRNA量が約28%増加し、有意に変化しないUCP2・UCP3とは明らかな違いを示した。 以上より、少なくともAAとDHAという2種の多不飽和脂肪酸の経口投与が、BATのリン脂質脂肪酸組成の変化と共に、UCP1mRNAレベルをサブタイプ特異的に刺激する事が明らかとなった。一方で、UCP1mRNAレベルの増加から予想されるBAT熱産生能の亢進がin vitro系では認められず、UCP2、UCP3の役割を含めて今後の検討課題となった。
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[Publications] Saha, S.K.: "In vitro thermogenesis and phospholipid fatty acid composition of brown adipose tissue in fasted and refed rats"Japanese Journal of Physiology. 49(4). 345-352 (1999)
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[Publications] 大日向 浩: "熱産生器官-褐色脂肪組織脂肪酸組成の適応変化"臨床体温. 16(1). 22-29 (1998)