1998 Fiscal Year Annual Research Report
浸透圧調節系の体温調節系・循環調節系に対する修飾機構の解析
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10770031
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
鷹股 亮 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (00264755)
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Keywords | 体温調節 / 浸透圧調節 / 汗ナトリウム / バゾプレッシン / 馴化 |
Research Abstract |
体温調節系と浸透圧調節系は、密接に関連し合って機能していることを、我々は明らかにしてきた。今回は、暑熱馴化において浸透圧調節系がどのように影響を受けるのかをヒトを用いた実験を行い検討した。暑熱馴化は、体温調節機能を亢進させるとともに汗ナトリウム濃度を低下させることが知られている。汗ナトリウムの低下は、一定量の発汗をした際の血漿浸透圧の上昇を増加させる。一方、我々は血漿浸透圧の上昇が体温上昇時の体温調節反応である発汗及び皮膚血管拡張反応を抑制することを報告して来た。そこで、暑熱馴化により浸透圧上昇による体温調節機能の抑制作用が減弱しているのではないかという仮説を立てそれを検証する実験を行った。 実験に先立ち実験の説明を受け、同意書を提出した被験者、男性9名、女性2名の計11名の被験者が参加した。被験者に高張性食塩水または等張性食塩水を投与した後、下腿温浴(42℃、室温28℃)を負荷して体温を上昇させ、その際の発汗および皮膚血管拡張反応の深部体温閾値を求め、汗ナトリウム濃度との関係を求めた。更に汗ナトリウム濃度とバゾプレシンン分泌の浸透圧感受性との関係を求め、馴化による浸透圧性の体温調節抑制の減弱が体温調節に対する特異的なものなのか、それとも浸透圧感受性を一般的に低下させるのかに関しても検討した。 浸透圧上昇に対する体温調節反応の抑制(発汗および皮膚血管拡張反応の深部体温閾値の上昇)は、汗ナトリウム濃度が低い被験者程小さく、体温調節反応の浸透圧抑制と汗ナトリウム濃度の関係には高い正の相関が認められた。従って、馴化している個人程浸透圧上昇による体温調節機能の抑制は小さかった。また、バゾプレッシン分泌の浸透圧感受性はと汗ナトリウム濃度の間には、相関が認められなかった。従って、馴化によって起こる浸透圧刺激性の体温調節反応の抑制の減弱は、浸透圧調節系一般の抑制によるものではなく、体温調節系に特異的であることが明らかになった。この浸透圧調節系の適応は、暑熱馴化による体温調節機能の亢進(長時間の暑熱曝露時や運動時の体温維持)に寄与している可能性が示唆された。今後、更にこのメカニズムを明らかにするために動物実験を計画している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Takamata, A.et al.: "Role of plasma osmolality in the delayed onset of thermal cutaneous vasodilation during dynamic exercise in humans." American Journal of Physiology. 275. R286-R290 (1998)
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[Publications] Nagashima, K.et al.: "Control of skin blood flow during prolonged exercise in a hot environment with continuous negative pressure breathing." Journal of Applied Physiology. 84. 1845-1851 (1998)
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[Publications] Nakajima, Y.et al.: "Plasma osmolality and arterial pressure regulation during heating in dehydrated and awake rats." American Journal of Physiology. 275. R1703-R1711 (1998)
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[Publications] Morimoto, T.et al.: "Thermoregulation and body fluid in hot environment." Progress in Brain Research. 115. 499-508 (1998)
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[Publications] Takamata, A.et al.: "Effect of heat acclimation on body fluid regulation in older subjects." FASEB Journal. 12. A125 (1998)
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[Publications] Takamata, A.et al.: "Relationship between osmotic shift of thresholds for thermoregulatory responses and sweat sodium concentration in humans." Japanese Journal of Physiology. 48. S216 (1998)