1998 Fiscal Year Annual Research Report
p53遺伝子異常からみた胃内分泌細胞癌の組織発生に関する検討
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10770073
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
西倉 健 新潟大学, 医学部, 助手 (30272818)
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Keywords | 胃内分泌細胞癌 / 組織発生 / p53 |
Research Abstract |
[目的]胃内分泌細胞癌における内分泌細胞癌部、共存する腺癌部分ならびにカルチノイド腫瘍のそれぞれのp53遺伝子変異パターンを比較検討することにより、胃内分泌細胞癌の組織発生経路を明らかにする。 [材料・方法]パラフィン包埋された胃内分泌細胞癌14症例。これらを組織切片上で分化型腺癌(以下tub)部分と内分泌細胞癌(以下ECC)部分とに細分する。細分された各病変ごとにDNAを採取、抽出し、PCR法・ダイレクトシークエンシング法を経てp53遺伝子変異(exon5-8領域)の検索を行う。[結果]14症例から2〜6(平均3.6)領域の病変を細分し各DNAを採取した。このうち9症例の遺伝子解析を終了し以下の成績を得た。すなわち、1)4症例(4/9:44.4%)でtub部分とECC部分とに共通のp53遺伝子変異を認めた。うちわけは、exon 8およびexon 6領域の点突然変異が2例および1例、またexon 6領域の欠失が1例それぞれ認められた。さらに欠失のみられた1例では、tub部分においてexon 6領域に異なる別の欠失が重複して認められた。2)3症例(3/9:33.3%)では、ECC部分においてexon5,7および8領域にそれぞれ点突然変異がみられたが、tub部分では同一の変異を認めなかった。すなわち2例はwiId type,1例は別の点突然変異であった。3)2症例(2/9:22.2%)では、tub部分、ECC部分ともに変異を認めなかった。[考察]44.4%(4/9)の症例でtub部分とECC部分とに共通したp53遺伝子変異が見いだされたことから、内分泌細胞癌が粘膜内に先行発生した分化型腺癌部分からモノクローナルに発生・増殖した可能性が示唆される。また腺癌部分にさらに別変異が認められた症例があることから、粘膜内腺癌部分にp53遺伝子のheterogeneityが存在し、内分泌細胞癌発生に関してクローナルセレクションが生じた可能性が考えられる。したがって、腺癌部分に共通変異が認められなかった症例に関しては、領域を増やしてさらに十分な検討が必要と考えられる。
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