1998 Fiscal Year Annual Research Report
NGFおよびその受容体の下垂体発生過程ならびに腫瘍病変における解析
Project/Area Number |
10770076
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
大久保 貴子 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (00303785)
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Keywords | Nerve growth factor(NGF) / Trk A / pituitary / hypothalamus |
Research Abstract |
予定された研究の内で現在までに以下の研究が遂行された。ヒト胎児では、排卵後50日前後の時期には、内分泌細胞の分化が認められる。この時期には、少数のNGF陽性細胞が見られた。これらのNGF陽性細胞はsynaptophysin陽性の内分泌細胞よりサイズがかなり小さく、また、内分泌細胞と異なりRathke腔に近い位置に分布していた。この時期にはS-100やGFAPで染色されるfolliculo-stellate細胞への分化は認められなかったが、胎生3ヶ月以降の胎児では、26-30週齢の流産児の連続切片で検索をした結果、NGF陽性細胞の一部はS-100、GFAP陽性でfolliculo-stellate細胞としての性格を有するものと、Prolactinなど内分泌細胞の性格のあるものが後葉との境界部近傍で数多く見出された。したがって、NGF産生細胞は、下垂体の成熟に伴い、異なった性格の細胞群へ別れて行く可能性が示唆されたものの、この点に関しては今後さらに検討を要する。また、排卵後50日前後の下垂体原基では、抗Trk A抗体で認識されるNGF受容体は、未熟で小型な内分泌細胞としての性格の明らかでない細胞のほとんどに見出された。したがって、この時期に下垂体内にみられるNGFが、未熟な細胞が内分泌細胞として分化して行く際にparacrine的に作用している可能性が伺えた。排卵後50日前後の視床下部から下垂体への神経連絡は完成しておらず、この時期では、NGF受容体の明瞭な発現は認めなかったが、連携が明瞭な26週には、NGF受容体の発現が下垂体後葉から視床下部にかけて強く発現しているのが認められた。したがって、当初の予想通り前葉で作られたNGFが視床下部の神経との連携の成立あるいは維持に何らかの関係を有していることが示唆された。また、腫瘍性病変では、下垂体腺腫12例の内6例にNGFを認めたが、産生ホルモンとの関連がとくに認められた。
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