1999 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍及び炎症性疾患における熱ショック蛋白の発現と機能に関する病理組織学的研究
Project/Area Number |
10770085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇於崎 宏 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10296246)
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Keywords | 免疫組織化学 / 骨肉腫 / ストレス蛋白 / 熱ショック蛋白 / リンパ節 / 制癌剤 |
Research Abstract |
【組織標本における検索】東大病院病理部の標本から、臨床データが揃った腫瘍として骨肉腫108例を対象に平成10年度に引き続き、熱ショック蛋白の発現を免疫組織化学的に検討した。骨芽細胞で発現の見られるHSP47は骨肉腫でも高い発現率(94%)であることが分かった。予後との比較では、平成10年度の結果の通り、HSP27,60,70と予後不良の関連が観察された。このうち、HSP27は独立した予後因子となった。炎症関連の疾患では、リンパ節炎の見られたリンパ節生検材料40例を用いて、免疫組織化学的な発現の検討を行った。熱ショック蛋白の発現はリンパ球の他、内皮細胞、組織球に見られたが、症例毎に発現細胞が異なり、その傾向は明らかとならなかった。リンパ球と組織球における発現を観察したが、SLE、リウマチなどの自己免疫性疾患と感染などに関連したその他のリンパ節炎との間に発現の有意な違いは観察されなかった。 【培養細胞での検索】平成10年度に続き、骨肉腫細胞株(SaOS2,HOS,NST)についてメソトレキセート(MTX)に耐性を示す細胞株の樹立を試み、5-50倍の耐性を示す細胞4種を得た。これらについて、免疫細胞化学的には熱ショック蛋白の増強は確認されなかった。そのほかの薬剤耐性関連蛋白としてP糖蛋白の検索を行い、HOSから得られた耐性細胞1種でHOSと比べ、発現の増強が見られた。Western Blot法による検索では、陽性コントロールとした熱ストレス(42℃、30分)後の細胞では、ストレス後24-48時間でHSP27,70の発現の増強が見られた。前述のMTX耐性細胞について検索した結果、SaOS2から得られた細胞1種でHSP27の発現が増加していることが確認された。これらMTX耐性細胞ではP糖蛋白など熱ショック蛋白以外の蛋白や遺伝子変化が耐性により関与している可能性が考えられた。
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