1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ接合性消失(LOH)解析による腫瘍発生及び進展の分子病理学的研究:大腸表面型腫瘍および混合型肝癌を中心として
Project/Area Number |
10770086
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
藤井 博昭 順天堂大学, 医学部, 助手 (50296836)
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Keywords | ヘテロ接合性消失(Loss of heterozygosity,LOH) / 表面平坦型大腸腫瘍 / 混合型肝癌 / マイクロディセクション / マイクロサテライト / クローナリティー / 潰瘍 / 進展 |
Research Abstract |
表面型大腸腫瘍:従来の隆起性腺腫でのadenoma-carcinoma sequenceとは異なる発生進展様式が想定されている同腫瘍の各病変部位のLOHを検索し、以下の知見を得た。 1) 腺腫を有さない高異型度癌症例で、de novoで均一に3p,5q,9p,17p,18q,22qなどに多数のLOHを起こし、浸潤するものがあった。17p,18qLOHの頻度が高く、p53,DCCなどの早期関与が想定される。 2) 近接する腺腫を直接経由せずに粘膜内癌、浸潤癌に至る経路が認められた。 3) 粘膜内で腺腫を経て、あるいは低異型度癌から高異型度癌に至る際、LOHの蓄積進展や枝分かれ現象のある症例がみられた。 4) 5qLOHも高頻度にみられ、隆起性腺腫とは異なったAPC遺伝子の関与が想定される。 以上のごとく、表面平坦な粘膜内早期に腫瘍クローンの遺伝子変異が蓄積、選択され浸潤癌に至る様式が明らかとなった。今後、症例数を重ね、またより微小の早期粘膜病変を解析し、遺伝的特徴を明らかにしたい。 混合型肝癌:11症例につき、肝細胞癌と胆管癌細胞部LOH解析を行い、クローナリティーおよび腫瘍成分の遺伝的特徴と組織分化能との関係につき、以下のような新知見を得た。 1) 3症例では、LOHのパターンが肝癌部と胆管癌部で全く一致せず重複癌とされた。いずれも"combined type"の腫瘍であった。 2) 4症例では、LOHのパターンは、検索した範囲内では、肝癌部と胆管癌部で全て共通しており、単一クローン由来で遺伝的に均一な腫瘍細胞の持つ多分化能に基ずく腫瘍であると考えられた。 3) 残り4症例では、両性分に共通するLOHに加えて、どちらか一方にのみLOHのみられるalleleがあり、遺伝的不均一性が認められた。よって、単一クローン由来でも、遺伝子変化の蓄積、分散現象が分化能に密接に影響している事が明らかとなった。
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