1998 Fiscal Year Annual Research Report
条虫より単離した新しい糖鎖構造をもつ糖脂質が寄生現象に果たす役割を解明する研究
Project/Area Number |
10770111
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
川上 泰 麻布大学, 環境保健学部, 講師 (80204684)
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Keywords | 寄生虫 / 条虫 / 糖脂質 |
Research Abstract |
我々は、宿主・寄生虫特異関係を決定する因子解明への生化学的アプローチとして、寄生虫の糖脂質に着目し、その組成・構造解析を行い、寄生虫の寄生現象と寄生虫糖脂質との関わりについて研究を行っている。すでにマンソン裂頭条虫のプレロセルコイドより単離した糖脂質(SEGLx、GalSEGLx)が、新しい糖鎖構造をもつ糖脂質であることを報告し、これら一連の糖脂質をSpirometosidesと命名した。本年度はSpirometosidesの生合成経路を調べる目的で、プレロセルコイドおよび成虫から糖脂質を単離・精製し、化学構造解析を行った。さらに条虫の発育に伴う糖脂質の化学構造の変化についても合わせて検討を行った。 SEGLxおよびGalSEGLxの前駆体物質であるCMH、CDH、CTHの化学構造はそれぞれ、Gal-CerとGlc-Cer、Glc1-3Gall-CerとGal1-6Gal1-Cer、Gal1-4Glc1-3Gal1-CerとGlc1-(Gal1-6)3Gal-Cerであることを決定し、ほぼ構成経路の推定ができた。また成虫ではCDはGlc1-3(Gal1-6)Gal-Cer、CTHはGal1-4Glc1-3Gal1-Celとプレロセルコイドでは存在しなかったGlc1-3(Gal1-6)Gal-Cerが確認された。次にプレロセルコイドおよび成虫から抽出した中性糖脂質を用いてTLCおよびTLC-immunostainingを行った。TLC上Oorcinol-硫酸試薬による発色では両者のパターンは異なっており、成虫ではSEGLxと同じ移動度にプレロセルコイドに比較して強く発色するバンドが観察された。またGalSEGLxのバンドは成虫では発色が弱かった。また抗SEGLxモノクローナル抗体(AK97)を用いたTLC-immunostainingを行った結果、プレロセルコイドの中性糖脂質画分ではSEGLx、GalSEGLxがAK97と反応したが、成虫の中性糖脂質画分はSEGLxの一番上のバンドと同じ移動度を示すバンドとGalSEGLxと同じ移動度を示すバンドが反応した。しかしながら、orcinol-硫酸試薬で強く発色していたバンドでも、AK97には反応を示さないものもあった。以上の結果からプレロセルコイドと成虫では異なった糖鎖構造をもつ糖脂質が存在することが示唆された。現在ラジオアイソトープを用いた取り込み実験を継続中である。
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