1999 Fiscal Year Annual Research Report
ディフィシル菌の毒素産生を増強させる菌体内制御因子の解明
Project/Area Number |
10770115
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前側 恒男 金沢大学, 医学部, 助手 (50283114)
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Keywords | Clostridium difficile / 偽膜性大腸炎 / 細菌毒素 / ビオチン / N末アミノ酸解析 / 遺伝子クローニング / プリン生合成 |
Research Abstract |
ディフィシル菌の毒素産生が著しく増強するビオチン欠乏条件下では,毒素タンパクの他に140kDaタンパクの発現が増強する。このタンパクをコードする遺伝子をクローニングして塩基配列を解析したところ,本タンパクはプリン生合成経路のある段階を触媒する酵素であることが判明した。 サザン解析の結果,本酵素の遺伝子は1ゲノムにつき1コピーのみ存在することが分かった。また,ディフィシル菌の有毒株および無毒株合計104株についてPCR法にて当該遺伝子の有無を調べたところ,毒素産生性とは無関係に全ての菌株が本酵素の遺伝子を保有していることが分かった。 本酵素タンパクのN末側部分に相当する組換えポリペプチドをマウスに免疫してポリクローナル抗体を取得し,菌体タンパクに対してウエスタンブロッティングを行ったところ,予想された140kDaタンパクのみが認識された。また,本酵素はビオチンが十分に存在する培養条件下では,対数増殖期にわずかに発現しているのみであったが,ビオチン欠乏下では定常期以降も高発現していることが分かった。細胞分裂時にはゲノムの複製やリボソームの分配などの目的のために多量の核酸が必要であるため,対数増殖期にプリン生合成が活性化されることは理に適っている。しかしビオチン欠乏条件下では,それ以外の時期にも本酵素が高発現しており,何か特別な意味を有しているものと考えられた。 そこで,当該酵素の活性を特異的に阻害する薬剤を培地に加えたところ,ビオチン濃度とは無関係に毒素産生の増強が見られた。 以上の結果から,ビオチン欠乏条件下では何らかの原因で本酵素の活性が抑制され,その結果毒素産生の増強が起こっているものと考えられた。また,本酵素の抑制に抵抗するために本酵素の発現量が上昇したものと考えられた。
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