1998 Fiscal Year Annual Research Report
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のβ-ラクタム剤耐性に影響を及ぼす因子についての研究
Project/Area Number |
10770119
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小松澤 均 広島大学, 歯学部, 助手 (90253088)
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Keywords | Staphylococcus aureus / メチシリン耐性 / β-ラクタム剤 |
Research Abstract |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のβ-ラクタム剤耐性に影響を及す因子を明らかにするため,トランスポゾン(Tn551)挿入によりMRSAのβ-ラクタム剤耐性を減少させる変異株を分離した。 分離した変異株3株についてトランスポゾン挿入領域の遺伝子のクローニング・シーケンスを行い,耐性に影響を及す因子の遺伝子領域を決定した。また,得られた変異株の性状についても検討し,以下の結果を得た。 1.変異株(TS111)のトランスポゾンは2478個のアミノ酸からなる分子量263kDaのタンパクをコードする遺伝子領域にその挿入を認めた。 このタンパクの中央部分には75個のアミノ酸からなる17個の繰返し構造が認められ,この部分でStreptococcus・suisの病原因子であるEFタンパクと相同性が認められた。また,C末端において細胞壁ペプチドグリカンに結合するモチーフが認められ,このタンパクは細胞壁に局在していると考えられた。 2.変累株(TS1およびTS4)のトランスポゾンはそれぞれ挿入位置は異なるが分子量96.8kDaのタンパクをコードする遺伝子領域にその挿入を認めた。しかし,相同性検索の結果,このタンパクと相同性を示すタンパクは認められなかった。 3.変異株3株の細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成は親株のものと差は認められなかった。 種々の溶菌酵素(細胞壁分解酵素)に対する感受性も変異株と親株とに差は認められなかったが,菌の自己溶解能は親株と比べていずれの変異株でも増大した。 高速液体クロマトグフィーを用いた細胞壁の解析の結果,変異株で親株と比べ少し構造が異なる部分も認められたが,大きな細胞と壁の構造の変化は認められなかった。
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