1998 Fiscal Year Annual Research Report
胸腺細胞の分化・増殖・細胞死制御におけるMAPKスーパーファミリーの役割
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10770144
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐藤 健人 東海大学, 医学部, 助手 (50235363)
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Keywords | T細胞 / MAPK / 分化 / 細胞死 / 増殖 |
Research Abstract |
胸腺細胞の各分化過程及びこれに伴う増殖・細胞死制御の解析にあたり、これをin vitroにおいて再現する優れた培養系の開発をおこなった。すなわちJenkinsonらにより開発された再凝集培養法を、単一クローンからなる未熟胸腺細胞(TCRトランスジェニックマウス、以下TCR-Tgマウス、より調製する)に適用し、かつ、新たに考案したレトロウイルスを用いてこの培養系への遺伝子導入を行った。 Jenkinsonらの方法では成熟T細胞の出現に4-6日を要し、かつこの過程ではより多数の細胞死が同時に起こってしまうという問題があった。非選択的MHCを背景にもつTCR-Tgマウスを用いるとこれらの問題を解決することができる。すなわち培養2日でほとんどの未熟T細胞が細胞死を起こすことなく成熟T細胞へ分化し、従来分子的な解析が困難であった当該の分化過程を追跡する事が可能となった。 これまで未熟段階のT細胞に遺伝子を導入することは、導入効率の点で大きな制約があった。筆者は上記の再凝集培養系にレトロウイルスの産生細胞を直接添加すること、新生仔期のTCR-Tgマウス胸腺細胞を用いることで90%以上という驚異的な導入効率を実現した。この系を用いてJNKキナーゼであるSek1のドミナントネガティブ変異遺伝子の導入を行い、未熟T細胞の分化及び細胞生存が阻害されることを見いだした。 T細胞分化におけるMAPK,中でもJNKの生理的意義についてはいくつかの相反する知見が報告されており、統一的理解に達していない。これは、これまでの実験系では分化過程を同調して観察できていないことによる制約があるためと思われる。本研究で樹立した実験系は今後、MAPKの他様々な分子の機能を解析するのにきわめて有効と考えられる。
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[Publications] Takehito Sato: "CD45 can act as a negative regulator for the transition from early to late CD4+CD8+thymocytes" Intermational Immunology. (in press).
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[Publications] Takehito Sato: "β-Selection of immature thymocytes is less dependent on CD45 tyrosinephosphatase" Immunology Letters. 64. 133-138 (1998)