1998 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー型痴呆患者の転倒の予測因子としての歩行の変動性の検討
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10770165
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Research Institution | Seinan Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
中村 貴志 西南女学院大学, 保健福祉学部, 講師 (70292505)
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Keywords | アルツハイマー型痴呆 / 転倒 / 歩行の変動性 |
Research Abstract |
本研究では、歩行中に人や動物の名前を想起する認知課題を同時に遂行する課題を用いて、軽度のアルツハイマー型痴呆患者50名、80歳未満の健常高齢者20名および80歳以上の健常高齢者20名を対象に、テレメータ方式の歩行分析計を用いて歩行の時間的(立脚時間,遊脚時間)・空間的(ストライド長,頭部の位置)変動性を定量的に測定し、各群間で比較検討した。また、対象者の転倒・骨折経験の有無と歩行の変動性、臨床データとの関連について検討した。 その結果、自由歩行時と比較して記憶想起に関する認知課題を同時に遂行する条件下の歩行では、アルツハイマー型痴呆群と80歳以上の高齢者群で有意な歩行速度の低下と歩行の時間的・空間的変動性の上昇が観察された。一方、80歳未満の高齢者群では、認知課題を同時に遂行する条件下の歩行で速度に低下が認められたものの、変動性については歩行の条件間に有意差がみられなかった。次に、アルツハイマー型痴呆群と80歳以上の高齢者群の中で、転倒経験群と非経験群で比較してみると、認知課題を同時に遂行する条件下で転倒経験群の歩行の変動性は有意に高かった。歩行の変動性を評価するために用いた指標の中でも、特に歩行時の立脚時間の変動性は転倒群で最も高い値を示した。自由歩行においては、有意差がみられなかった。また、アルツハイマー型痴呆群の転倒の関連要因として、精神症状の悪化、徘徊行動および日常生活能力の低下が認められた。 以上の点から、記憶想起に関する認知課題を遂行しながら歩行している時に測定した歩行の時間的・空間的変動性は、アルツハイマー型痴呆患者や後期高齢者の転倒の予測因子の一つとして有効であると考えた。
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