1998 Fiscal Year Annual Research Report
体脂肪量の変化に伴う、DDTの脳神経系および再生産に及ぼす影響
Project/Area Number |
10770175
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
出嶋 靖志 杏林大学, 保健学部・人類生態学教室, 講師 (00237025)
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Keywords | 体脂肪量 / DDT / カテコールアミン / インドールアミン |
Research Abstract |
7週齢のICR系雄マウス18匹を搬入後、通常MF飼料と比べて脂肪量が1.73倍のCMF飼料とフィルターろ過した水道水を与えて飼育した。搬入1週間後、マウスを6匹ずつ3群に分け、2群は落花生油に溶解したDDTを1日50mg/kg、Morio et al.(1987)の分類による四肢を除く軽い震え(Score 1)が発生するまで毎日経口投与し、残り1群(Oil群)には同期間、落花生油のみを投与した。当初の計画ではDDT投与にはDDT混入飼料を使用する予定であったが、摂食時に生じるDDTを含む飼料粉末が環境中に飛散する危険を防ぐ目的と、投与量を正確にする目的で経ロゾンデを使用することとした。投与終了後、DDTを投与したうちの1群(以下、DDT-L群)とOil群は体脂肪量を減少させる目的で、飼料を通常のMFに切り替えて1日1匹辺り約2.5gに制限し、さらにベルト式強制運動装置で運動負荷を与えた。DDTを投与した残りの1群 (以下、DDT-O群)には引き続きCMF飼料を自由に与え運動負荷は与えなかった。DDT-L群の全個体にMorio et al.(1987)の分類による、全身の震えと興奮(Score 2)の徴候が観察された時点で、全群を解剖し脳内の生理活性アミンを測定した。食事制限と運動負荷によりDDT-L群とOil群の体重は減少し、自由に摂食させたDDT-O群と比べて有意な差を示した。DDT-L群のDOPAC濃度、HVA濃度、ドーパミン(DA)代謝速度は他の2群と比べ有意に高い値であることがわかった。また、MHPG濃度、セロトニン(5-HT)代謝速度は、Oil群と比べて有意に高かったが、DDT-O群との有意差は認められなかった。以上の結果は、体脂肪組織中に蓄積されたDDTは脂肪量減少に伴って生体内に遊離し、ドーパミンを中心とした中枢神経系に影響を及ぼす可能性を示唆している。なお、脳・脂肪組織中DDT量については、分析のための標準物質が申請発注後6ヶ月経過した現在末入荷のため次年度に分析する予定である。上記実験に加えて、老化に伴う体脂肪量減少がDDT毒性に及ぼす影響を評価するための長期DDT投与実験を開始した。
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