1999 Fiscal Year Annual Research Report
医療機関と生活の場での訓練ストラテジーの比較 -トランスファー繰り返し訓練を通じて-
Project/Area Number |
10770182
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Research Institution | Hiroshima Prefectual College of Health and Welfare |
Principal Investigator |
古山 千佳子 広島県立保健福祉短期大学, 作業療法学科, 助手 (90280205)
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Research Abstract |
在宅障害者3例に、生活場面でのトランスファー繰り返し訓練を行い、トランスファー得点評価表とカナダ作業遂行測定(以下COPM)を用いて、効果を測定した。研究デザインはシングルケース実験法を用いた。<結果>症例1は93才女性。脳梗塞、両大腿骨頸部骨折で、現在ほぼ寝たきり状態。コミュニケーションは良好。COPMの結果、本人が最も重要とする課題が、ポータブルトイレでの排泄自立だった。ベッド等の物理的環境を整えた後、両手でプッシュアップしながら横移動する方法でトランスファー繰り返し訓練を行った(13日間67回)。その結果、ベースライン期に比べて訓練期の方がトランスファー得点の上昇が急で、トイレに関するCOPMの満足度と遂行度が上昇した。症例2は83才女性。腰椎すべり症と臥床による下肢筋力低下のためADLに部分介助を要していた。COPMの結果、2番目に重要な課題が、夜間のトイレ動作を安定させることだった。フレーム付きのポータブルトイレで安全に排泄することを目標に一つ一つの動作を確認しながらトランスファー繰り返し訓練を行った(5日間28回)。その結果、トランスファー得点に差はなかったが、安定性が増し、夜間のトイレに関するCOPMの遂行度と満足度が上昇した。症例3は65才男性。約10年間に3度の脳梗塞を繰り返し、現在は寝たきり状態。失語、痴呆があり、自発語もなくコミュニケーションは不可能だった。下肢で体重支持することに重点を置き、介助量を徐々に減らすよう繰り返し訓練を行った(9日間36回)。その結果、トランスファー得点がわずかに上昇した。以上3症例全てに、何らかの改善がみられた。<考察>医療機関を退院した慢性期であっても、実際に生活する場面(在宅)を適切な環境に整えて、繰り返し訓練した場合、トランスファー能力に改善がみられた。さらに症例数を増やし、この訓練ストラテジーの一般的な効果を明らかにしたい。
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