Research Abstract |
1.破裂を伴う急性心筋梗塞による突然死77例(男性51例,女性26例,47〜94歳,平均69.9歳)を検索した.梗塞部位は,前壁中隔が約半数(48%)で,側壁がこれに次ぐ(23%).梗塞の病理学的chronologyは,1週間前後の症例(36%)と1日以内の症例(31%)がほぼ拮抗し,破裂部位は,前壁が半数(53%)を占め,側壁が次ぐ(27%).破裂様式(Becker分類)では,2型が最も多く(61%),1型が次ぐ(35%).破裂部の壁厚は,正常部分の半分に減少(51%)していた.心内膜亀裂は全例で観察されたが,出血性梗塞の症例は5例(6.5%)のみであった。rupture tract壁には,ほぼ全例で血栓が観察され,chronologyは心内膜側のほうが心外膜側よりも古く,心内膜亀裂から破裂が進展していることが示唆された.心外膜亀裂(1本が71%)は平均1.5cmで,心嚢血腫(平均330ml)にはほぼ全例で凝血が混在していた. 2.冠動脈には,75例(97%)に血栓が,2例に塞栓(アテローム塞栓1例,石灰化塞栓1例)が観察され,全例で責任冠動脈(左前下行枝十対角枝(58%),回旋枝(23%),右冠動脈(19%))が確認され,うち 70例に粥腫破綻がみられ,破裂を伴う急性心筋梗塞の病理発生についても,冠動脈粥腫破綻が梗塞病変の原因となっていることが示され,急性冠動脈症侯群と共通の形態学的基盤を有していることが明らかとなった. 3.心肺蘇生術施行例(44例)と非施行例(33例)にわけて,各検索項目を比較検討したが,いすれも有意差がなく,蘇生術による心破裂の可能性は極めて低いことが示唆された. 4.物理的負荷のかかる部位(例えば中隔移行部や乳頭筋付着部など)で内膜亀裂が形成されている傾向が示唆されたが,この点は破裂機序を考察するうえで今後の検討課題と考えられた.
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