1998 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌発生のメカニズムならびに大腸癌化学予防の作用機序に関する研究
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10770239
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
小西 英幸 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (30295670)
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Keywords | 大腸腫瘍 / COX-2 / 化学予防 |
Research Abstract |
大腸癌発生とその化学予防のメカニズムを解明するため、COX-2蛋白の発現様式と局在を明らかにし、腫瘍の表現型とp53蛋白過剰発現を含む遺伝子学的背景との関連性について検討している。 大腸腫瘍(腺腫及び早期癌)62症例のホルマリン固定標本を用い、COX-2免疫染色を施行し、腫瘍の大きさと組織型、p53蛋白過剰発現の有無、核DNA量、また癌においては腺腫共存の有無(腺腫(+)群あるいは腺腫(-)群)で分類し、染色パタ-ンとの関係につき検討した。 COX-2蛋白は、正常上皮ならびに腫瘍径の小さい腺腫においては陰性であったが、腫瘍径の増大にともなって全例弱陽性を示した。一方癌においては、腺腫共存の有無に関わらず大部分が陽性を示した。しかしその染色性には差異があり、低異型度癌では弱陽性、異型の強い部分や腫瘍先進部において強陽性となった。またde novo cancerでは強陽性を示さない症例や核染色を示す症例があり、その原因については今後の検討が必要と考えられた。 p53蛋白は、腺腫(+)群では全例癌部のみ過剰発現を示したが、腺腫(-)群の表面型癌で過剰発現を示さない症例があった。p53蛋白の過剰発現とCOX-2蛋白の発現に相関はなかった。 核DNA量は正常粘膜部と腺腫部では全てdiploidyであったが、癌部では腺腫の有無に関わらずanueploidyを示す症例が大部分で、これもCOX-2蛋白の発現と明らかな相関がなかった。 COX-2選択的阻害剤を代表とした非ステロイド系抗炎症剤の有する大腸癌発生の化学予防作用については、その効果の期待できる症例とできない症例のある可能性があり、症例選択のための更なる検討が必要と考えられる。 今後症例の蓄積とともに腺腫共存の有無での比較、細胞増殖能とアポトーシスとの関連などを追加し、大腸癌発生におけるCOX-2の役割を解明したい。
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