1999 Fiscal Year Annual Research Report
急性骨髄性白血病発症に関わる変異WT-1遺伝子作用の解析
Project/Area Number |
10770339
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 保志朗 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (00292334)
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Keywords | WT1遺伝子 / AML / mutation |
Research Abstract |
研究背景 WT-1遺伝子はWilms腫瘍の病因遺伝子として単離され、ヒト染色体11p13に座位する。その蛋白質は、Zn finger domainを有する転写制御因子で、その構造上の特徴から癌抑制遺伝子と現在考えられている。WT-1遺伝子は胎児腎、卵巣、精巣、脾臓、胸膜中皮細胞などの他に正常造血において造血幹細胞に限定して発現していることが示されたが、その機能は未だ不明である。さらに急性白血病においてWT1遺伝子の発現が高いほどその予後が不良であるとの報告や、白血病細胞におけるWT-1遺伝子変異の報告があり、WT1遺伝子は急性白血病の発症に深く関与していると考えられている。 症例 2才時に両側腎のWilms腫瘍を発症し、化学療法及び腫瘍部分切除術にて治癒と考えられていた5年後に急性骨髄性白血病を併発した6才男児の症例のAML初発時の骨髄細胞を用いて以下の方法でWT-1遺伝子のzinc finger domainの解析を行った。 方法 症例の初発時骨髄血から分離した単核球と症例の皮膚より採取、培養した繊維芽細胞からAGPC法によりtotal RNA抽出を行った。total RNAからcDNAを合成し、WT1遺伝子cDNAのzinc finger部分であるexon 7からexon 10の間を増幅するようにprimerを設定し、RT-PCR反応を行った。RT-PCR産物をサブクローニングをした後、dideoxy法により塩基配列を決定した。さらに初発時のWilms腫瘍のパラフィン包埋された病理切片からTAKARA DEXPATをもちいてDNAを抽出し、exon 1からexon 10のそれぞれにprimerを作製し、DNAレベルでのWT1遺伝子の解析を試みた。 結果 RT-PCRの結果、positive controlであるHL-60,初発時の白血病細胞で予想された445bp付近にバンドが認められた。 初発時患者骨髄血からのRT-PCRによって得られたDNA fragmentの複数のサブクローンのシークエンスの結果、WT1 coding resionのexon 9内にT→Cの変異が認められた。その結果、Leu524(CTG)→Pro(CCG)のアミノ酸変異があることが確認された。また、症例の繊維芽細胞から抽出したtotal RNAからは変異は認められなかった。Wilms腫瘍におけるDNAレベルでのWT1遺伝子の解析はExon 1からExon 2にかけて正常コントロールと異なるバンドが認められ,現在塩基配列を検索している。 考察 本症例の変異WT1遺伝子が白血病の発病に関与している可能性が強く疑われる。また、正常alleleが存在している白血病においてもWT-1遺伝子の変異が認められていることにより、変異WT-1が白血化に対してdominant negativeに作用している可能性が考えられる。
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