1999 Fiscal Year Annual Research Report
抗血小板薬トラピジルの血管平滑筋細胞におけるPDGF増殖抑制機構の解明
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10770362
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石倉 健司 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30276307)
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Keywords | トラピジル / PDGF / サイクリックAMP(cAMP) / サイクリン / サイクリン依存性キナーゼ / RhoA |
Research Abstract |
我々はすでに,in vitroでトラピジルがPDGFによるラット血管平滑筋細胞増殖を抑制すること,及びその機序がmitogen-activated kinase(MAPK)抑制を介すことを明らかにしている.さらに,トラピジルが細胞内cAMPを増加させることも示し,MAPK抑制がおそらくcAMP増加を介していることを提唱した(Hypertension.1998;31;665-671.). さらに我々は,トラピジルの作用機序の詳細を明らかにするため,トラピジルとcAMP増加物質であるフォールスコリンの血管平滑筋細胞に対する影響を比較検討した.まず,フローサイトメトリーを用いてラット平滑筋細胞細胞周期に対する影響を検討した.その結果PDGFが細胞周期を促進し,トラピジル,フォールスコリンとともにその促進を完全に抑制することを明らかにした.次に,細胞周期関連蛋白であるサイクリン,サイクリン依存性キナーゼ(CDK),CDKインヒビターに対する影響を検討した.そこでは,両試薬ともにPDGFによるサイクリンD1,サイクリンA蛋白量増加を抑制すること,及びCDK4,CDK2の活性を抑制することを明らかにした.しかし,CDKインヒビターに対する影響は両試薬で完全に異なっていた.すなわち,p27はPDGFで減少し,トラピジルはその減少に影響を与えなかったが,フォールスコリンはPDGFによる減少を完全に回復させた.p21はPDGFにより増加し,フォールスコリンはその増加に影響を与えなかったが,トラピジルはその増加を完全に抑制した. 両試薬のCDKインヒビターに対する影響が異なったことから,トラピジルにはcAMP増加を介さない細胞周期抑制機序の存在が予想される.その候補の一つがsmall G protein familyであるRhoAである.現在,細胞溶解物を超遠心法により,solubleおよびparticulate分画に分離し,それぞれの分画におけるRhoAの発現量を比較検討することにより,両試薬の影響の評価を行っている.
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