1998 Fiscal Year Annual Research Report
Sporothrix schenckiiの分子生物学的手法を用いたタイピング
Project/Area Number |
10770384
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
立石 毅 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60292554)
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Keywords | Sporothrix schenckii / chitin synthase |
Research Abstract |
私たちは、パルスフィールドゲル電気泳動によるS.schenckiiの核型解析から,日本国内分離株は酷似した核型を示す一方,国内分離株と海外分離株との間に大きな違いがあることを既に報告した. 今回,核型解析を行った菌株のchitin synthase遺伝子の塩基配列を決定し,その相同性に基づいて菌株間の分子系統学的検討を行うとともに、核型に基づく系統関係との比較を行った.S.schenckii ll菌株.(日本国内分離株7株,米国分離株3株,ブラジル分離株1株)について,chitin synthase遺伝子(SPJCHSYA)530bpをPCR増幅した後に、ダイレクトシークエンス法を用いて塩基配列を決定した.系統樹の作成は菌株間の相同性を基にUPGMA法を用いて行った. その結果,核型の場合と同様に,日本国内分離株間では塩基配列に高い相同性がみられたが,国内分離株と海外分離株との間ではそれが低い傾向が示された.系統樹の上からも国内分離株は海外分離株と離れた位置に分類された. S.schenckiiは菌株によって,酵母形の細胞が卵円形,葉巻形,球形または棍棒形と幾つかの異なる形態を示すことが知られている.形態形成に関与する遺伝子の塩基配列によって系統分類ができるならば、形態の多様性の一部を説明できる可能性があり、また、菌株の分離地域によって特定遺伝子の塩基配列に差がある点は本菌の系統進化,および型別の観点からも重要と思われる.さらに、核型という異なる解析法によって得られた系統関係と類似の結果を示す点は興味深い. 今回得られた結果について、Journal of Clinical Microbiologyに投稿中である。
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