1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト色素産生細胞異常症におけるagouti signal proteinの役割
Project/Area Number |
10770421
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
サンティス 智恵 北里大学, 医学部, 助手 (10255292)
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Keywords | 色素 / agouti / ASP |
Research Abstract |
本年度はヒト悪性黒色腫とagouti signal protein(ASP)との関連について、組織学的およびin vitro実験系で検討を行った。悪性黒色腫患者(進行期)の腫瘍部とその周囲に生じた白斑部から得た組織の凍結切片に対して,酵素抗体法を用いたところ、腫瘍部では腫瘍細胞がtyrosinase強陽性、ASP陰性を示した。一方、白斑部組織においては残存melanocyteはtyrosinase陰性、一部弱陽性であり、その周囲の細胞の一部にASPが弱陽性を示した。これは白斑部の電顕像でmelanocyte中にpheomelanosome様構造物を認めた現象が、ASPがeumelanogenesisからpheomelanogenesisへのswitchingを起こしたことによる可能性を強く示唆した。マウスのmelanocyteの培養液中にASPを加えると樹枝状突起が短くなり、細胞増殖が遅くなることから、自験例においても腫瘍部周囲の白斑部の細胞はASPを産生することによって腫瘍を抑制しようと働いている可能性が考えられた。ただし、westen blottingでは血清中のASPの存在は確認できなかった。自験例では、原発病変部周囲のみでなく、頭部・上肢にも広く白斑がみられ、それぞれの部位でASPが産生されていると考える。現段階で腫瘍塊、白斑部組織からのASPの精製は成功していないが、悪性黒色腫によるASP産生の促進因子の存在についても非常に興味深い課題と考え、検討を行っていきたい。
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