1998 Fiscal Year Annual Research Report
がん患者のQOL向上を目指す支持療法の開発-「がん情報への取り組み方/患者用・家族用マニュアル」の作成-
Project/Area Number |
10770486
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐伯 俊成 広島大学, 医学部, 助手 (70284180)
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Keywords | がん / 家族 / 感情状態 / コーピンクスタイル / 家族機能 |
Research Abstract |
緒言:生命予後が良好なために心理社会的因子との関連が深いといわれる乳がん患者を対象として、がんへの罹患が患者や家族の心理状態あるいは家族全体の機能におよぼす影響を、標準化された評価尺度を用いて調査した。 対象と方法:広島大学医学部附属病院乳腺外来に通院中の乳がん術後女性手者のうち、書面で調査への同意が得られた18名とその同居家族計46名を対象として、半構造化精神科診断面接(SCID)による精神科診断のほか、3種類の自記式質問紙-(1)Mental Adjustment to Cancer(MAC)Scale、(2)Profile of Mood States(POMS)、(3)Family Assessment Device(FAD)-を用いて、(1)がんに対する患者のコーピングスタイル、(2)患者の感情状態、(3)患者の家族機能、の3点を調査した。 結果:患者の「前向き」なコーピングスタイルは家族の良好な「問題解決」機能と、「悲観」的なコーピングスタイルは家族の「全般的機能」の障害と有意に相関があった。また、患者の感情状態のうち、「抑うつ」と「疲労」の強さは家族の「全般的機能」の障害と、「混乱」の強さは家族の「行動統制」「役割分担」の障害と有意に相関があった。 考察:本年度の研究によって、乳がん患者の感情状態およびコーピングスタイルが家族機能と密接に関連していることが明らかになった。まだ症例数が少なく、あくまで予備的な結果であるが、がんへの治療的取り組みにおいて、患者のネガティブなコーピングスタイルの改善を図ることによって直接的に、あるいは家族機能のポジティブな変化を介して間接的に、患者自身の感情状態が改善され得ることが示唆された。今後、さらに多数例の検討によって、より具体的かつ実証的な「がん情報への取り組み方/患者用・家族用マニュアル」の作成が可能になると思われる。
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