1999 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野および扁桃核病変が中脳側坐核ドパミン神経系の反応性に及ぼす影響について-脳内微小透析法を用いた精神分裂病の病態仮説を検証する研究-
Project/Area Number |
10770487
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
兼行 浩史 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (30263784)
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Keywords | 前頭前野 / 側坐核 / 扁桃核 / ドパミン / ストレス / 摂食行動 / 微小透析法 |
Research Abstract |
側坐核ドパミン(DA)神経系が、扁桃核および前頭前野(PFC)からの下行性投射によってどのように調節されているかを検討するために、扁桃核またはPFCの神経細胞を選択的に破壊したラットを対象とし、脳内透析法を用いて、ストレスおよび報酬刺激に伴う側坐核のDA放出量の変化を観察した。7〜8週齢のWistar系雄性ラットを用い、麻酔下でイボテン酸溶液(10μg/μl)を0.5μlずつ注入して扁桃核またはPFC病変を形成し、12日後にl字型透析プローブを右側坐核に植え込んだ。病変作成14日後、灌流液を10分間隔でHPLC-ECDに注入してDA濃度を測定した。DA濃度が安定した後、30分間の摂食行動(18時間絶食後)を行わせ、1時間安静の後、10分間のtail-pinchストレスを負荷した。本実験後、プローブ先端の位置とイボテン酸病変の領域を確認した。 その結果、ストレスによって、側坐核の灌流液中のDA濃度は、扁桃核病変ラット(n=8)では、最大28%の増加を示し(対照群(n=8)と有意差なし)、PFC病変ラット(n=8)では、17%と対照群(39%)に比べて有意に減弱した反応を示した(p=0.02)。一方、30分間の摂食行動によって、扁桃核病変ラットでは、32%と有意に減弱した反応を示し、PFC病変ラットでは、対照群と有意差なく40%の増加を示した。以上より、成熟ラットに扁桃核病変を作成すると、摂食行動に伴う増加反応のみが減弱すること、PFC病変では、逆にストレスに伴う増加反応のみが減弱することが分かった。本結果から、摂食行動とストレスによる側坐核DA系の活性化には、それぞれ異なった神経回路が関わっており、ストレスではPFCからの下行性投射が、摂食行動では扁桃核からの投射が、それぞれ重要な役割を果たすことが示唆される。
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