1998 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン選択的再取り込み阻害剤の抗うつ効果に関する研究
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10770495
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
和久津 直美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (80301539)
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Keywords | セロトニン選択的再取り込み阻害剤 / paroxetine / 脳内透析法 / うつ病 |
Research Abstract |
セロトニン選択的再取り込み阻害剤(serotonin selective reuptake inhibitor,SSRI)は、うつ病の治療に使用され、fluvoxamine、sartralineやcitalopramなどのSSRI急性投与では、縫線核において5-HT神経細胞系を高め、細胞外5-HT濃度を上昇させるが、大脳皮質ではあまり影響を受けないといわれている。 平成10年度は、SSRIの一つであるparoxetine0.5,2,8mg/kgと1%CMC 1mg/kgをラットに単回腹腔内投与し、内側前頭前野における5-HTとその代謝産物である5-HIAAを同時に脳内透析法を用いて測定した。8mg/kg群においては、細胞外5-HT濃度の有意な上昇(p<0.05,最大値;180分後、560%)と細胞外5-HIAA濃度の有意な減少(p<0.05、最大値;180分後、69%)を認めた。2mg/kg群では、細胞外5-HT濃度の有意な上昇(p<0.05、最大値;180分後、480%)と細胞外5-HIAA濃度の有意な減少(p<0.05、最大値;100分後、73%)を認めた。0.5mg/kg群においては、投与後140分後に最大約310%の細胞外5-HT濃度の基礎値の上昇が認められ、細胞外5-HIAA濃度の有意な減少(p<0.05、最大値;180分後、74%)が認められた。以上の研究実績の概要については第11回国際ヨーロッパ精神薬理学会(ECNP、パリ)にて成果発表した。 脳内透析法による5-HTと5-HIAAの同時測定は手技的にも難しいが、今回この方法による同時測定に成功し、paroxetineの急性単回投与によって、ラット内側前頭前野での細胞外5-HT濃度の上昇と、5-HIAA濃度の減少が認められた。これは、paroxetineの5-HT再取り込み阻害作用によって、内側前頭前野における細胞外5-HT濃度が上昇し、シナプス小胞内の5-HTが減少したため、5-HIAAへの代謝が減少した結果と考えられる。今回、paroxetineの低用量(2,0.5mg/kg i,p)においても、内側前頭前野における細胞外5-HT濃度の上昇を示した。paroxetineの5-HT再取り込み阻害能(IC50)がTCAや他のSSRIに比して強く、細胞外5-HTの5-HT1A受容体結合能(Kd)が強いということから考えると、これらの結果は、paroxetineが低用量においても5-HT神経終末領域における作用が強いという可能性が考えられる。次年度は反復投与による脳内モノアミンの変化を同様に実験する予定である。
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