1999 Fiscal Year Annual Research Report
HTLV-I感染によるiNOS遺伝子発現誘導機構の解析
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10770510
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森 直樹 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (10220013)
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Keywords | 成人T細胞性白血病 / ヒトT細胞性白血病ウイルス / Tax / 誘導型NO合成酵素 / NO / アポトーシス |
Research Abstract |
1HTLV-I感染細胞株およびATL細胞におけるiNOSのmRNAの発現:培養細胞株で調べると,HTLV-I感染細胞株ではiNOSのmRNAの発現が強く,Taxの発現の程度にほぼ並行する所見が得られた。さらにこれらの細胞株ではiNOSの蛋白発現およびその酵素作用の産物であるNOの産生も確認された。またATL患者末梢血中のATL細胞でもiNOSのmRNAの発現を認めた。ヒトT細胞において明らかなiNOSの発現を認めたという報告はなく,今回ATLにおいてはじめて明らかとなった。 2HTLV-IウイルスのTax蛋白質によるiNOS遺伝子の転写活性化:メタロチオネインのプロモーターによってTax蛋白質を発現誘導するJPX-9細胞の培地にCd^<2+>を加えてTaxを発現させると,明らかなiNOSのmRNAの誘導が観察された。iNOS遺伝子の5'-上流域とルシフェラーゼcDNAとを結合したレポータープラスミドを作製しておこなったレポーター実験で,Taxの発現によって転写活性の著明な増大が得られ,iNOSがTaxの標的遺伝子であることが確認された。さらにこのプロモーター領域から種々の欠失断片を作製してレポータープラスミドに組み込み,Taxにより活性化される遺伝子配列を検討した。その結果,Tax依存性配列は-159/-111bpの配列と特定された。この部位にはNF-κB配列が存在したが,この配列に変異を導入したレポーターでもTaxにより転写は活性化され,NF-κB活性化能を欠いたTax変異体でも転写は活性化された。さらにIκB-α,IκB-βの優性抑制変異体をTaxと同時に発現させても転写の抑制は認められず,Tax依存性配列はNF-κB配列ではなかった。現在,さらに詳細にTax依存性配列を検討中である。 3NOによるアポトーシスの抑制:iNOSの発現およびNOの産生を認めたHTLV-I感染細胞株をNOS阻害剤であるL-NMMAで処理すると,アポトーシスが誘導された。HTLV-I感染により誘導されたiNOSはNOを生成し,アポトーシスを抑制するとこが腫瘍化機構に関与している可能性が示唆された。
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