1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトアルドース還元酵素発現トランスジェニックマウスにみられる腎病変の解析
Project/Area Number |
10770523
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山岸 晋一朗 弘前大学, 医学部, 助手 (80301026)
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Keywords | 糖尿病 / 腎臓 / ポリオール代謝 / ヒトアルドース還元酵素 / トランスジェニックマウス / 形態計測 / 糸球体過剰濾過 / ガラクトース |
Research Abstract |
糖尿病性腎症の発症におけるポリオール代謝の役割を解明するため、ヒトアルドース還元酵素(hAR)発現トランスジェニックマウス(Tg)にガラクトースを長期間経口投与し、形態学的に検討した。また、片腎摘出による糸球体過剰濾過をTgに加え、形態学的検討を行うとともに、酸化ストレスの関与について検討した。 TgおよびhAR陰性マウス(LM)に生後8週目より30%ガラクトース食の投与を開始し、投与開始から10ヵ月後にマウスより腎臓を摘出し、形態計測を行った。また、生後8週目に、左腎摘出処理をTgおよびLMに施し、腎摘後8週で腎血流量を測定後、残存腎を摘出し、形態計測および8-OhdGの免疫染色を行った。 ガラクトース投与実験では、腎重量は、ガラクトース投与Tg群、ガラクトース投与LM群ともに、Tg群、LM群に比し有意に増加した。形態計測では、糸球体横断面積、係締横断面積は、ガラクトース投与Tg群で、Tg、LM群に比し有意に増加した。メサンギウム領域は、ガラクトース投与Tg群で、Tg、LM群、ガラクトース投与LM群に対して有意に増加していた。ガラクトース投与Tgでは、有意なメサンギウム領域の拡大が生じたことから、アルドース還元酵素の高度発現が、糖尿病性腎症の糸球体病変の形成に関与していることが明らかとなった。 片腎摘出実験では、腎重量および腎血流量は腎摘群で増加した。糸球体横断面積、係締横断面積は、腎摘群で未処置群に比し有意に増加し、メサンギウム領域は、腎摘Tg群で、腎摘LM群に対しても有意に増加した。8-OHdGの免疫染色では、腎摘Tgの糸球体のみに陽性細胞を認めた。以上により、ポリオール代謝亢進に糸球体過剰濾過が加わった場合、ヒト糖尿病に類似する糸球体病変が形成され、この時、酸化ストレスが、病変形成に働いていると考えられた。
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