1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10770531
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
徳山 博文 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50276250)
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Keywords | NO / PG / 虚血性腎症 |
Research Abstract |
【目的】腎動脈狭窄による虚血性腎症(Ischemic Nephropathy)は進行性腎不全の重要な原因疾患である。本研究では、慢性腎虚血(4週)におけるNO、PGを含む腎内脈管作動性物質の動態、またその意義を明らかにするため、中等度(50%)及び高度(80%)腎血管狭窄を作成し検討した。【方法】ドップラー血流計を用い、定量的にイヌの片側腎動脈の中等度(50%)及び高度(80%)狭窄を作成した。4週後microdialysis法を用い、麻酔イヌの虚血側・非虚血側腎のnitrate+nitrite(NOx)、PGを測定した。さらに、LNAME及びスルピリンを投与し、腎機能に及ぼす影響及びNOx・PGの動態の変化を観察した。【成績】中等度及び高度狭窄における虚血側腎のNOxは、それぞれ約40%、60%と減少した(皮質、1.98±0.07から1.14±0.04、0.72±0.05uM;髄質、2.50±0.06から1.60±0.04、1.00±0.02uM)。LNAMEにより、中等度狭窄ではRBFは56%、GFRは40%減少したが、高度狭窄ではこの変化は軽度であった(RBF、11%減少;GFR、9%減少)。PGE2は中等度狭窄虚血側腎では軽度上昇し(皮質、26%上昇;髄質、17%上昇)、高度狭窄ではさらに著しい上昇が認められた(皮質、1.98±0.07から10.57±0.89pg/min;髄質、3.02±0.06から13.50±0.67pg/min)。非虚血側腎ではNOx、PGE2の変化は認めなかった。スルピリン投与により、中等度狭窄ではRBF、GFRは不変であったが、高度狭窄ではRBF54%、GFR55%の減少がみられた。 【考察】野入らはラットを用いた急性腎不全モデルにおいて、i-NOSを特異的に阻害するantisense oligodeoxynucleotideを投与したとき、超急性期において急性腎不全は改善され、尿細管障害を防止したと報告している。本研究では、腎間質のNOは増加せず、狭窄の程度に平行して低下することより、NOの変化は腎血行動態に伴うshear stressの減少によるものと考えられた。虚血性腎症では、中等度狭窄ではProstaglandinE2(PGE2)よりむしろnitric oxide(NO)が腎血行動態の温存に重要な役割を果たし、高度狭窄ではPGE2の著しい増加がみられ、虚血の程度により、腎内脈管作動性物質の役割が異なることが示唆された。
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