1998 Fiscal Year Annual Research Report
ステロイド産生組織および副腎皮質三層の発生分化の分子機構
Project/Area Number |
10770555
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹森 洋 大阪大学, 医学部, 助手 (90273672)
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Keywords | 副腎皮質 / 層分化 / 球状層 / アルドステロン |
Research Abstract |
組織特異的および発生、分化特異的に発現される遺伝子を容易に単離する新たな方法を開発し3層から構成される副腎皮質のうち、球状層に特異的に発現する遺伝子(ZOG)の単離に成功した。ZOGに対する抗体を作成し層特異性を検討したところ、ZOGは皮質細胞の機能発現に左右されることなく球状層で均一に発現していた。また、ZOGの発現は副腎刺激ホルモン等の影響も受けないことが明らかとなり、これまで報告されている球状層のマーカーとしては最も細胞分化だけを規定することが可能であることが示唆された。また、球状層から束状層へと短時間で分化させることのできる副腎皮質再生実験により、ZOG発現している球状層細胞そのものが束状層細胞へと分化可能であることを示唆する結果を得た。これらの結果から、副腎皮質3層の起源はZOG発現球状層細胞そのものであるという新しい概念を提唱した(この論文の一部は発表したEndocrinology誌の表紙に採用された)。さらに、胎児副腎でのZOGの発現を検討した結果、層分化前の段階では全ての皮質細胞でZOGが発現していることが明らかとなり、ZOG発現細胞が副腎3層の起源であることを裏付ける証拠となった。一方、ヒト副腎皮質疾患に着目してみると、ZOG高発現は原発性アルドステロン症で確認された。アルドステロン産生ヒト副腎皮質腫瘍より分離された細胞株を利用しZOGの発現とアルドステロン産生能を検討した結果、ZOG高発現の有無はアルドステロン産生能の有無に相関していた。このことはZOGの発現低下がアルドステロン産生という球状層細胞の性格を失う原因になった可能性を示唆するものである。これらのことをまとめると、ZOGが発現している球状層は他の2層の未分化細胞集団であり、ZOG発現抑制に相関して球状層から束状層へと分化するものと予想される。そこで、ZOGの発現抑制機構をさらに解明する目的で、ラットのZOGのゲノムの単離を行い、現在までにZOG副腎特異的な転写調節に関与する領域を同定することができた。
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[Publications] S.K.Halder.H Takemori,H.Hatano,Y.Nonaka,A.Wada,M Okamoto: "Cloning of a membrane-spaning protein with epidermal growth factorlike repeat motifs from adrenal glomerulosa cells." Endocrinology. 139. 3316-3328 (1998)
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[Publications] M.Okamoto,H.Takemori,S.K.Halder,Y.Nonaka,O.Hatano: "Implication of ZOG protein,zona glomerulosa-specific protein in zone development of the adrenal cortex." Endocrine Research. 24. 515-520 (1998)
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[Publications] Y.Nonaka,T.Fujii,N.Kagawa,M.R.Waterman,H.Takemori,M.Okamoto: "Structure/function relationship of CYPIIB1 associated with Dahl's saltresistant rats-expresion of rat CYPIIB1 and CYPIIB2 in Escherichia coli." Eur.J.Biochem.258. 869-878 (1998)