1998 Fiscal Year Annual Research Report
電位差を利用した抗腫瘍物質の癌細胞への選択的集積性と抗腫瘍効果の検討
Project/Area Number |
10770595
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
阿部 定範 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80276261)
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Keywords | 脂肪親和性陽イオン / 選択的集積性 / ミトコンドリア障害性 |
Research Abstract |
脂肪親和性陽イオン/Delocalized lipophilic cations(DLCs)は負電位方向に集積する性質を持つ.一方、癌細胞のミトコンドリア正常細胞のものに比較し負電位が強いため各種DLCsはこの電位差を利用し、選択的に癌細胞のミトコンドリアに集積し、呼吸鎖に必要な酸化還元電位差を飽和し、癌細胞を死に至らしめると予想された。当教室では,これまで各種DLCsのうちlodacyanine化合物で多くの培養ヒト細胞株に対する抗腫瘍効果を検討してきた。本研究においては正常細胞と癌細胞のミトコンドリアの電位差に着目し、癌細胞ミトコンドリアを標的とした新しい作用機序を有する新規抗癌物質としての各種DLCsの開発を目的とし、アフリカミドリザル腎上皮細胞より得られた正常細胞(CV-1)と培養ヒト腫瘍細胞株(ヒト大腸癌株:CX-1、HT29、Co-4、LS174T、Colo205、WiDr、胃癌細胞株:MKN45、MKN74、膵癌細胞株:CRL1420)の各種培養細胞株および新鮮手術材料を用いてDLCsの癌細胞ミトコンドリアへの選択的集積性の検討を行った。各種細胞株とDLCsを0.3,3,10,30,100μg/mlで経時敵に接触させ、24,48,72時間培養後、励気488nm,比色525nmにより細胞中のDLCsをエタノールで抽出し、DLCs濃度をflow cytometerにより測定した。この比色法により細胞1個あたりに取り込まれたDLCsを算出し、正常細胞と癌細胞間のDLCsの取り込みの差ついて検討した。癌細胞においてDLCsの取り込みは正常細胞に比して有意に高く、濃度×時間依存性に増加した。ついで、ミトコンドリア障害性の検討としてヌードマウスを用いてDLCs投与機,肝・腎・心組織を採取し,組織をミンチ後ホモジナイズし,20%STE溶液により遠沈しミトコンドリア分画を採取した。ミトコンドリアにおける呼吸活性をClark oxygen electrodeを用いてpolarographyによる測定を現在進行中である。
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