1998 Fiscal Year Annual Research Report
好中球の組織因子発現について(蛋白及び遺伝子レベルでの解析)
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10770600
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
日暮 愛一郎 産業医科大学, 医学部, 助手 (20289581)
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Keywords | 組織因子 / 好中球 / 敗血症 / 凝固異常 |
Research Abstract |
重症感染症や外科的侵襲時に起こる凝固異常において、組織因子(tissue factor:TF)により惹起される外因系凝固活性化が中心的な役割を担っていることはよく知られている。我々はウサギ胆管炎・腹膜炎モデルを用いた研究から、生体侵襲時には従来知られていた血管内皮・単球以外に好中球がTFを発現し炎症局所での凝固活性化に深く関与していることを見いだした。 今年度の研究では、臨床検体での検討に入る予備実験としてサル(Macaca fuscata、Macaca mulatta)LPS静注モデルを作成し、採取した臓詣(肝・肺・腎)に対してTF免疫組織染色およびin situhybridization法によりTF蛋白・mRNAの発現・局在を検討した。これにより炎症早期には標的臓器に浸潤するのは主に好中球であること、それら好中球にTF蛋白・mRNAが誘導され全身的凝固活性化も惹起されていることが明らかになった。次に臨床検体での検討として急性虫垂炎および肝癌にて外科的に切除したヒト虫垂および肝臓(非癌部)組織に対して同様の検討を行い、ヒト好中球にもTF発現能力が存在することを見いだしつつある。 一方、好中球でのTF発現には細胞間相互作用が重要と考え、血管内皮と好中球との共培養系を用いた実験を進めているが、好中球でのTFmRNA発現を証明できていない。これについて先のサルモデルを用いて、抗セレクチン・インテグリン抗体などによる抑制実験を計画しており好中球でのTF発現機構をまずin vivoで明らかにしていく予定である。また、重症感染症例より採取した末梢血から好中球を分離し浸潤好中球との差異を検討中であり、これによっても何らかの示唆が得れるのではないかと考えている。
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[Publications] Hidekazu Todoroki: "Possible role of platelet-activating factor in the in vivo expression of tissue factor in neutrophils" Journal of Surgical Research. 80・2. 149-155 (1998)
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[Publications] 中村 伸: "別冊 医学のあゆみ 血液疾患 Ver.2 -state of arts" 三浦裕士(医学薬出版株式会社), 628 (1998)